日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ハギンズ(Sir William Huggins)
はぎんず
Sir William Huggins
(1824―1910)
イギリスの天文学者。恒星分光写真術の開拓者。ロンドンに生まれ、病弱のため大学進学をあきらめ、家業を継いだ。1856年、私設天文台を建て、天体観測に没頭した。1859年ごろまでは主として惑星を観測したが、キルヒホッフとブンゼンのスペクトル線の解釈を知り、分光器と写真機との組合せを考え、恒星のスペクトル写真観測を始めた。1864年、その観測資料を王立天文協会に提出し、認められて翌年、会員に選ばれた。とくに輝星の大気の元素組成を検出し、散光星雲は水素輝線を呈する高温ガス体であること、アンドロメダ星雲(銀河)は吸収線を伴う恒星の集団であることを確認し、1868年以来、ドップラーの原理を用いて約30個の恒星の視線速度を測定、また彗星(すいせい)の炭素や太陽紅炎(こうえん)中のカルシウムを分光観測で発見した。多彩な業績により王立協会、王立天文協会より表彰され、両協会会長を歴任、1897年ナイトに叙せられた。
[島村福太郎]
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