ハウス病(読み)ハウスびょう

改訂新版 世界大百科事典 「ハウス病」の意味・わかりやすい解説

ハウス病 (ハウスびょう)

ハウス農業従事による健康障害を総称したもの。ハウス農業は,園芸における温室栽培を農業生産に活用したもので,農作業が鉄パイプの枠にビニルシートをはりめぐらした背の低いハウスの中で行われるために,健康上の問題が起こりやすい。すなわち,(1)ハウス内では温度条件を人工的に調節して年間の生産可能期間を長くする結果,現実には,農繁期を長引かせて労働負担が大きくなり,またハウス内が晩春から夏にかけては高温となり,冬は内外の温度差が大きいなどのために,疲労循環障害の起こること,(2)害虫が付きやすくなるため農薬の使用が多くなるので,農薬の吸入,接触の危険が多くなること,(3)ハウス内が狭く,あぜ幅も狭いので,つるや葉による皮膚ずれのためのかぶれ,無理な姿勢のための腰痛をはじめ,肩,腕,大腿ふくらはぎの疲労,痛みが多くなること,などの問題が指摘されている。またハウス内の生産物の出荷調整作業もかなりの時間と労力を費やし,その作業場の状態も衛生的でない場合が多く,ハウス内の作業の負担と重なって健康障害を生みやすくする。こうした問題の解決のために,ハウスの改造換気通風,あぜ幅の拡大,農薬散布方法の改良,過長な労働時間の適正化,衛生知識の向上のための努力が,農業改良普及活動として行われている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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