ハウェルズ(読み)はうぇるず(英語表記)William Dean Howells

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハウェルズ」の意味・わかりやすい解説

ハウェルズ
はうぇるず
William Dean Howells
(1837―1920)

アメリカの小説家、批評家。オハイオ州の印刷屋に生まれ、独学で文学を学んだ。ロシア文学からイタリアやスペインの文学まで広くヨーロッパの文学に親しみ、リアリズムをアメリカの文学風土に育成することに努めた。オースティンの文学をリアリズムの頂点と高く評価し、トルストイのキリスト教的な博愛思想の影響を強く受けた。初めボストンで、ついでニューヨークで活躍した。『アトランティック・マンスリー』誌の主筆を経て『ハーパーズ・マガジン』誌の主筆となり、評論活動などで多くの若い作家たちを育てることに貢献するとともに、自らも『ありふれた事件』(1882)、『サイラス・ラパムの出世』(1885)、『新興成金の奇禍』(1890)など多くの長編小説を発表。手法の面では性格描写にリアリズムを確立すべく努力しつつ、アメリカが前例のない民主主義の社会であるから、文学もまたそのような社会との関連で考えられなければならないとした。したがって、評論『批評と虚構』(1891)ではオースティンの家庭小説を高く評価する一方、天才といえどもその狂気大衆を毒することは許されるべきではないとして、ゲーテを激しく非難した。家庭や倫理を重視したハウェルズ文学は、大衆社会における芸術家のあり方に問題を投げかけるものでもあった。

[後藤昭次]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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