ノイン・ウラ(読み)のいんうら(英語表記)Noin-ūla

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノイン・ウラ」の意味・わかりやすい解説

ノイン・ウラ
のいんうら
Noin-ūla

モンゴル国の首都ウランバートル北方100キロメートルにある、匈奴(きょうど)の王族・貴族の古墳群のある山。212基の古墳中10基が、コズロフを隊長とするソ連調査団によって発掘された(1924~25)。墳丘は低いが、方形の主丘に長い前方部が連なり、その主丘の下に、中国漢代の墳墓の形式と似た木槨(もっかく)室が構築されている。棺の下に敷かれた毛氈(もうせん)や壁飾りの刺しゅうにスキタイ系文化と西方ペルシア系文化の特徴がみられる。副葬品として埋められた各種の容器、装身具、玉器、馬具、車蓋(しゃがい)類は、中国製が大部分を占め、前漢の建平5年(前2)の銘文をもつ漆器もある。織物は中国の絹布がもっとも多く、それには平絹、錦(にしき)、紗(しゃ)、羅などあらゆる種類が含まれている。これらによって、西暦紀元前後の匈奴支配層が、匈奴自身のスキタイ系文化を発達させるとともに、中国、西方文化の影響を強く受けていたことが明らかになった。

[護 雅夫]

『梅原末治著『蒙古ノイン・ウラ発見の遺物』(1960・東洋文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ノイン・ウラ」の意味・わかりやすい解説

ノイン・ウラ

モンゴル,ウランバートルとキャフタとの中間の山にある匈奴(きょうど)の古墳群。1924年―1925年コズロフ探検隊が王墓発掘調査。漢代の絹,鏡,漆器のほか,ペルシア風の刺繍(ししゅう)や,スキタイ文化風の動物意匠飾金具などが発見され,紀元前後の東西交流の研究上重要な遺跡の一つ。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ノイン・ウラ」の解説

ノイン・ウラ
Noin-ūla

ノヨン・オールともいう。匈奴(きょうど)の王族の古墳群(前1~後1世紀)。ウラーンバートルとキャフタとの中間の山中に位置する。ソ連のコズロフ探検隊が1924年から発掘,調査。絹布,漆器,鏡など漢の製品が多いが,サルマタイやイラン美術の影響もみられる。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android