ネーミア(英語表記)Lewis Bernstein Namier

改訂新版 世界大百科事典 「ネーミア」の意味・わかりやすい解説

ネーミア
Lewis Bernstein Namier
生没年:1888-1960

イギリスの歴史家。ユダヤ系ポーランド人で,本来の姓はニーミロフスキLudwik Bernstein Niemirowski。オックスフォード大学近代史を専攻し(1908-11),イギリスに帰化してネーミアと改姓(1913)。第1次大戦後,実業界やジャーナリズムで一時活躍した後,歴史研究に没頭し,その成果を《ジョージ3世即位時の政治構造》(1929)および《アメリカ革命期のイングランド》(1930)として刊行。個々の議員の伝記的研究を主眼とする精密な議会史の記述によって,二大政党制と責任内閣制の成立を18世紀イギリスに認めようとする既成の歴史学に根底的な再検討をせまり,〈ネーミア史学〉と呼ばれる独自の学風を開いた。1931-53年マンチェスター大学近代史教授。1951年以降,国家的事業としての《議会史》編集委員となり,1754-90年の時期を分担(3巻本として1964年刊行)。ほかに彼はヨーロッパ近代ナショナリズムの歴史にも関心を寄せ,またシオニズム運動を実践した(1929-31,40-45)。52年ナイト爵を授けられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネーミア」の意味・わかりやすい解説

ネーミア
Namier, Sir Lewis Bernstein

[生]1888.6.27. ウーコフ
[没]1960.8.19. ロンドン
イギリスの歴史家。ユダヤ系ポーランド人の地主の家に生れ,渡英してオックスフォード大学で近代史を専攻し,1913年イギリス国籍を取得。著書『ジョージ3世即位時の政治機構』 The Structure of Politics at the Accession of George III (1929) と『アメリカ革命期のイギリス』 England in the Age of the American Revolution (30) によって,「ネーミア史学」と呼ばれる政治史研究の新方法を生み出した。 31~53年マンチェスター大学近代史教授。 52年ナイト爵に叙せられた。晩年,『議会史-1754~1790年の下院』 The History of Parliament: The House of Commons 1754-1790 (64) を編纂

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネーミア」の意味・わかりやすい解説

ネーミア
ねーみあ
Sir Lewis Bernstein Namier
(1888―1960)

イギリスの歴史家。ポーランドに生まれる。1906年オックスフォード大学に入学、のちにイギリス国籍を取得した。マンチェスター大学近代史教授(1931~53)。専門はイギリス18世紀政治史で、主著『ジョージ3世即位期の政治構造』(1929)をはじめとする一連の著作によって、18世紀に二大政党政治が行われていたとするホイッグ史学の通説を否定し、悪王とされてきたジョージ3世の復権を主張した。政治家の主義主張でなく、彼らの背後にあった地縁的、血縁的な人間関係を詳細に検討していく彼の手法は、歴史学界に大きな影響を与えた。19世紀以降のヨーロッパの革命史、外交史などに関する著作もある。1952年、ナイトに叙された。

[青木 康]

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