ネパール民主化運動(読み)ねぱーるみんしゅかうんどう

知恵蔵 「ネパール民主化運動」の解説

ネパール民主化運動

ギャネンドラ国王の強権政治が続いていたネパールで、国民政党勢力が議会(下院)を復活させ、民主主義の再生を試みた政治運動。国王は2002年10月に議会を解散して直接統治に乗り出し、次々に内閣をすげ替えていたが、政情は悪化の一途をたどっていた。06年4月、王政に対する市民の抗議運動が大きな盛り上がりを見せた。首都カトマンズでは、外出禁止令にもかかわらず、一時は10万人以上がデモに繰り出して王宮に迫った。治安部隊との衝突で多数の死傷者を出した。ついに国王は直接統治を断念し、下院を復活した。下院は新首相にギリジャ・プラサド・コイララ元首相を選出。同時に、国王の軍の統帥権や議会への拒否権を奪うなど王権を縮小し、軍を下院の支配下に置くなどの措置を決めた。また、新憲法制定のための制憲議会選挙の実施方法や新憲法の内容をめぐる論議に入った。コイララ新政権は同年5月下旬、武装勢力の共産党毛沢東主義派との対話も実現し、議会政党7党と毛派との間で暫定政権を発足させることで合意した。ネパールでは1990年に民主化が実現し、新憲法のもとで政党政治が認められたが、政権に就いた政党は利権あさりに走った。このため、国民は政党への批判離反を強め、国王の強権政治と毛派の台頭を許す結果になっていた。

(竹内幸史 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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