ヌーボー・レアリスム(読み)ぬーぼーれありすむ(英語表記)nouveau réalisme フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌーボー・レアリスム」の意味・わかりやすい解説

ヌーボー・レアリスム
ぬーぼーれありすむ
nouveau réalisme フランス語

フランスの批評家ピエール・レスタニーPierre Restany(1930―2003)によって、パリ在住の画家・彫刻家を中心に組織された運動で、「新しい現実主義」の意。1960年4月ミラノのアポリネール画廊で最初の宣言を発表し、「社会の現実を論争の意図なくありのままに記録する」ことを表明した。ついで6月、パリのリーブ・ドロワット画廊で「現実は虚構をしのぐ」のモットーで「パリとニューヨークのヌーボー・レアリスム展」を催した。メンバーは、イブクライン、ジャン・ティンゲリー、ニキ・ド・サンファールフェルナンデスアルマンFernandez Arman(1928―2005、本名アルマン・フェルナンデスArman Fernandez)、セザールCésar(1921―98、本名セザール・バルディッチーニCésar Baldiccini)、ダニエル・スペーリDaniel Spoerri(1930― )らにニューヨークのネオ・ダダの美術家たちが加わる。彼らは抽象表現主義への反動として、現代の都市的現実の呈示をねらう一種の反芸術を展開した。62年にニューヨーク、63年にミュンヘン、70年にミラノで凱旋(がいせん)展を催し、その運動を終えた。

[野村太郎]

『ピエール・レスタニー著、日向あき子訳「ヌーボー・レアリスムとネオダダ」(『美術手帖』1962年12月号所収・美術出版社)』

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百科事典マイペディア 「ヌーボー・レアリスム」の意味・わかりやすい解説

ヌーボー・レアリスム

1960年,批評家ピエール・レスタニーが中心となって展覧会と宣言を行ったフランス前衛美術のグループ。〈新しい現実〉という名称の通り,時代状況をそのまま提示することをスローガンとした。モノクローム絵画を提唱したイブ・クライン,工業廃材をスクラップするセザール,大量生産品の部品を集積するアルマン騒音を発する動く造形品を創るティンゲリーなどが中心となり,ほぼ同時期に米国に登場したネオ・ダダジャンク・アートと共通する傾向を展開した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヌーボー・レアリスム」の意味・わかりやすい解説

ヌーボー・レアリスム
Nouveau Réalisme

現代美術用語。新現実主義。 1960年ミラノで開かれた Y.クライン,J.ティンゲリー,F.アルマン,R.アンスら6人のグループ展の出品作に批評家 P.レスタニーが与えた名称。作品がいずれも再現という手段によらず,現代社会の産物をそのまま素材とすることによって,今日の現実を表わしているというのがその理由であった。のちにクリスト,D.スペーリらが参加し,60年代ヨーロッパの新しい美術の動向として注目された。

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