知恵蔵
「ヌーベルバーグ」の解説
ヌーベルバーグ
1950年代後半のフランスで始まった、20歳代の映画作家たちによる、自由奔放な映画作りの動き。“新しい波"の意味。映画青年たちはシネマテーク(フィルム・ライブラリー)で名作を見尽くし、映画批評を寄稿するうちに、古い道徳観や硬直化した撮影所システムにとらわれない実作活動に着手。背景音楽にモダンジャズを使い、ロケ撮影によるリアルな映像で描いたサスペンス映画「死刑台のエレベーター」は、25歳の新鋭ルイ・マル監督が57年に発表した、ヌーベルバーグの先駆的作品。59年にはジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」やフランソワ・トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」、クロード・シャブロル監督の「いとこ同志」、アラン・レネ監督の「二十四時間の情事」などの意欲作が相次いで作られた。低予算に着目した製作者は新人や若手監督のデビューを推進したが、そのことが逆にヌーベルバーグの動きをねじまげ、68年の5月革命を契機に終息へと向かった。同時に、ゴダールは政治志向を強め、シャブロルはサスペンスに傾倒、そうした中でトリュフォーだけは84年に亡くなるまでヌーベルバーグの精神を持ち続けた。
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ヌーベルバーグ
nouvelle vague
1950年代後半から 1960年代前半にかけてのフランスで,商業映画に束縛されず自由な映画制作を行なった若手グループの映画。「新しい波」の意。映画評論誌『カイエ・デュ・シネマ』Cahiers du cinémaのアンドレ・バザンを理論的な指導者に,映画作家の自由な映画制作を主張していたクロード・シャブロル,フランソア・トリュフォー,ジャン=リュック・ゴダールらが,資金を持ち寄って,おのおの『いとこ同志』Les Cousins(1959),『大人は判ってくれない』Les Quatre Cents Coups(1959),『勝手にしやがれ』À bout de souffle(1959)を発表し,世界各国の若い映画人に大きな影響を与えた。このほか,「カイエ」派ではないが,ルイ・マルやアラン・レネらもヌーベルバーグに数えられる。
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ヌーベル‐バーグ
〘名〙 (nouvelle vague 「新しい波」の意) フランスで、一九五八年頃から現われた若い世代の映画監督、およびその作品傾向。映画評論誌「カイエ‐デュ‐シネマ」同人であったゴダール、トリュフォー、シャブロルらを中心に、
ストーリーにとらわれず映像の主体性を重視するなど、
旧来の映画作法の
打破を試みた。
※贅沢貧乏(1960)〈森茉莉〉「
仏蘭西の智能的なもの、心象をみる目、優雅、なぞは現代のヌウヴェル・ヴァアグの中にも息づいてゐて」
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デジタル大辞泉
「ヌーベルバーグ」の意味・読み・例文・類語
ヌーベル‐バーグ(〈フランス〉nouvelle vague)
新しい波。1958年ごろからフランス映画界に現れた一群の若い映画監督、およびその作品傾向をさす。ストーリーにこだわらず、映像の主体性を重視するなど、旧来の映画作法の打破を試みた。ゴダール・トリュフォーなど。
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