ヌカボ(英語表記)Agrostis clavata Trin.var.nukabo Ohwi

改訂新版 世界大百科事典 「ヌカボ」の意味・わかりやすい解説

ヌカボ
Agrostis clavata Trin.var.nukabo Ohwi

路傍原野草原に普通のイネ科の二年草。密に叢生(そうせい)して株を作る。茎は細く,高さ40~80cm。葉は細い線形で,長さ10cm余り,幅は3mm内外で,鞘(さや)とともにざらつく。初夏に開花する。花序はほとんど円柱状に見える幅の狭い円錐で,長さ20~30cm,数節から2~3本ずつの毛管状の枝を出し,ほとんどその基部からやや密に小穂をつける。小穂は長さ2.5~3.5mm,淡緑色で多少紫色を帯び,1個の微細な小花がある。日本全土と中国に分布し,基本変種は枝が伸びて散開するヤマヌカボA.clavata Trin.で,山林などによく見られ,ユーラシア大陸の温帯から寒帯に広く分布する。和名は糠(ぬか)の穂の意味で,小さい小穂が米糠のようにたくさん散った花序にちなむ。

 北半球に広く分布するコヌカグサA.alba L.(英名redtop)は茎の高さ1mに及ぶ多年草で,原産地はユーラシアとされるがはっきりしない。日本には牧草として渡来したものが逸出して北海道などに野生化した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌカボ」の意味・わかりやすい解説

ヌカボ
ぬかぼ / 糠穂
[学] Agrostis clavata Trin. var. nukabo Ohwi
Agrostis clavata Trin. subsp. matsumurae Tateoka

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。稈(かん)はやや株立ちし、高さ約50センチメートル、基部に翌年の新苗をつける。4~7月、稈頂に円錐(えんすい)花序をつける。花序の分枝は長短不同で、仮輪生状、ほぼ基部から小穂がある。花序は花期に開出し、花期後は直立する。小穂は1.5~1.7ミリメートル、小花が1個ある。護穎(ごえい)は包穎より短く、芒(のぎ)はない。日本全土の丘陵地に普通に生え、朝鮮半島、中国、またフィリピン高山にも分布する。名は、小穂が小さく、糠(ぬか)のように微細であるためつけられた。基本種はヤマヌカボである。

[許 建 昌 2019年9月17日]


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百科事典マイペディア 「ヌカボ」の意味・わかりやすい解説

ヌカボ

イネ科の二年草。日本全土,東アジアにみられ,田のあぜや多少湿った野原などに普通にはえる。高さ40〜80cm,5〜6月開花。花穂は細長い円錐形で,多数の小穂がつく。小穂は小さく長さ2〜3.5mm,のぎはない。糖穂の名は,小型の小穂に由来。近縁のコヌカグサは欧州から牧草として輸入された帰化植物で,高さ40〜90cm。花穂は円錐状で斜上枝が出る。春〜初夏に開花。

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