ニュージャーナリズム(読み)にゅーじゃーなりずむ(英語表記)New Journalism

精選版 日本国語大辞典 「ニュージャーナリズム」の意味・読み・例文・類語

ニュー‐ジャーナリズム

〘名〙 (new journalism) 客観報道を旨とする従来ジャーナリズムに対し、記者が単なる情報記録者であることをやめ、取材対象と個人的なかかわりあいを持つことで、事件本質を伝えようとする報道手法。一九六〇年代にアメリカで始まった。

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デジタル大辞泉 「ニュージャーナリズム」の意味・読み・例文・類語

ニュー‐ジャーナリズム(New Journalism)

記者が単なる情報の記録者ではなく、取材対象と個人的なかかわりあいをもつことで、事件の本質を伝えようとする報道の手法。

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知恵蔵 「ニュージャーナリズム」の解説

ニュージャーナリズム

1960年代、アメリカで成立した、ジャーナリズムにおけるルポルタージュ風エッセイの叙述方法。ノーマン・メイラーのエッセイ集『ぼく自身のための広告』(59年)あたりが原点とされる。ゲイ・タリーズ『汝の父を敬え』(71年)、トム・ウルフ『ライト・スタッフ』(79年)などが代表作。新聞記事のように、事件を、距離を置いて総括的に過去形で語るのではなく、会話を多用し、一人称や現在時制を進んで採用して、書き手の人格前面に打ち出し、焦点となった場面の臨場感あふれる再現を目指す。時に、登場人物の内面に自在に入り込んで、臨席していないことまで現場に立ち会っていたように書くことになるため、当然そこには必要最小限度フィクションが混入してこざるをえない。その意味でニュージャーナリズムがジャーナリズムの側からフィクションに一歩接近したものであるとすれば、フィクションの側からノンフィクションの側に一歩接近したのが、トルーマン・カポーティが『冷血』(66年)によって打ち立てた、ノンフィクション・ノベル(Nonfiction Novel)というジャンルである。ニュージャーナリズムとノンフィクション・ノベル影響は、日本記録文学伝統、ジャーナリズムのスタイルに大きく作用して、沢木耕太郎に代表される新しい書き手を生み出していった。佐木隆三『復讐するは我にあり』、村上春樹『アンダーグラウンド』などは、日本版ノンフィクション・ノベルの代表作。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ニュージャーナリズム」の意味・わかりやすい解説

ニュー・ジャーナリズム
new journalism

1960年代のアメリカに生まれたジャーナリズム。公的機関などの〈発表もの〉が大半を占めていた従来のジャーナリズムへの批判として,みずから〈ニュース〉を発見し,徹底した取材に基づき,より正確な事実・情報の提供を目ざす。集団ではなく基本的には1人のジャーナリストによって行われる。記事の対象となる人物の心理描写,密談の再現なども含まれるため,フィクションではないかという批判も一部にある。マフィアを扱ったゲイ・タリーズの《汝の父を敬え》(1971),宇宙飛行士の訓練や実生活を描いたトム・ウルフの《ザ・ライト・スタッフ》(1979)をはじめ,D.ハルバースタム《ベスト&ブライテスト》(1972),B.ウッドワードとC.バーンスタインの共著《大統領の陰謀》(1974)などがニュー・ジャーナリズムの収穫といえよう。活力を失った第2次大戦後の小説にとって代わる,新しい文学のジャンルとして評価されることもある。
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