ニューシネマ(読み)にゅーしねま(英語表記)new cinema

デジタル大辞泉 「ニューシネマ」の意味・読み・例文・類語

ニュー‐シネマ(new cinema)

1970年前後アメリカに起こった、ハリウッドを離れ、ロケ中心のリアリティーを追う映画運動。「俺たちに明日はない」「イージーライダー」などがその代表作アメリカンニューシネマ

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精選版 日本国語大辞典 「ニューシネマ」の意味・読み・例文・類語

ニュー‐シネマ

〘名〙 (New Cinema) 一九七〇年前後アメリカにおこった、ハリウッドを離れ、ロケ中心のリアリティを追う映画運動。「俺たちに明日はない」「イージーライダー」などがその代表作。

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改訂新版 世界大百科事典 「ニューシネマ」の意味・わかりやすい解説

ニュー・シネマ
(American) New Cinema

この表現が初めて使われたのは,アーサー・ペン監督《俺たちに明日はない》(1967)を特集したアメリカの週刊誌《タイム》(1967年12月8日号)の,〈ニュー・シネマ暴力,セックス,芸術! 自由にめざめたハリウッドの衝撃!〉というセンセーショナルな見出しのなかであった。不況時代のアメリカ中西部の銀行を荒らしまわった男と女の2人組のギャングの短く激烈な人生を描く,この〈アナーキーな暴力〉にみちた青春映画に次いで,やはり〈無法の青春〉を描いたデニス・ホッパー監督《イージー・ライダー》(1969)が,若い観客層を熱狂させて大ヒット。ともに低予算の映画で,ハリウッドの伝統である撮影所システムに縛られずに,ハリウッド育ちではない監督(アーサー・ペンはニューヨークの舞台の演出家出身であり,デニス・ホッパーはリーストラスバーグの〈アクターズ・スチュディオ〉の俳優出身である)によって〈自由に〉つくられたことから,ハリウッド=アメリカ映画の概念を打ち破った新しいアメリカ映画として〈ニュー・シネマ〉あるいは〈アメリカン・ニュー・シネマ〉の呼称で総括されることになった。

 おりから大手映画会社の撮影所が次々に外部の金融資本によって買収され,〈ハリウッドの崩壊〉が叫ばれていた矢先でもあったので,〈ニュー・シネマ〉こそアメリカ映画の救世主であり未来を背負う力であるとすらいわれたが,《俺たちに明日はない》の二番せんじのギャング映画や《イージー・ライダー》を模倣したオートバイ映画などがはんらんした結果,そのほとんどすべてが興行的に失敗した。1972年にはフランシス・フォード・コッポラ監督,マーロン・ブランド主演のマフィア映画《ゴッドファーザー》が,そして73年には豪華客船沈没を描いたロナルド・ニーム監督,ジーン・ハックマン主演のパニック映画《ポセイドン・アドベンチャー》が大ヒットして,伝統的なハリウッド方式(大スター,ベストセラー小説の映画化,金をかけた大作)の健在ぶりを証明。〈ニュー・シネマ〉は結局かけ声だけで一時の現象に終わった。
アメリカ映画
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知恵蔵 「ニューシネマ」の解説

ニューシネマ

“正義の国"のイメージをベトナム戦争によって覆された米国の若者たちの心を映すかのように、体制に抵抗する若者たちの姿を描いた一連の映画が1960年代後半から70年代にかけて作られた。雑誌「タイム」がアーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」を特集した時の見出し“アメリカン・ニューシネマ"が呼称のきっかけ。米国映画界が固守してきた規範を一気に乗り越え、鮮烈なバイオレンス描写とアンモラルな表現で多様な青春像を描き出した。テレビディレクター出身やニューヨーク派の監督たちが中心で、「イージー・ライダー」のように、デニス・ホッパーやピーター・フォンダら、スターたち自らが監督・企画した作品もあった。ほかにジョージ・ロイ・ヒル監督の「明日に向って撃て!」、マイク・ニコルズ監督の「卒業」、ジョン・シュレシンジャー監督の「真夜中のカーボーイ」、サム・ペキンパー監督の「ワイルドバンチ」、ウィリアム・フリードキン監督の「フレンチ・コネクション」などが代表作。

(宮本治雄 映画ライター / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内のニューシネマの言及

【トリュフォー】より

…第3作の《突然炎のごとく》で国際的な名監督という評価が定まり,以後はほぼ1年に1作のペースで作品をつくりつづけ,批評家時代に主張した〈作家の映画〉をみずから実践し〈フランス映画の中でももっとも人間的な共感を感じさせる監督の一人〉となった。 60年代以降のアメリカ映画の若い作家たちに与えた影響は大きく,とくにトリュフォー映画の男たちに共通する〈弱さ〉〈傷つきやすさ〉は,《俺たちに明日はない》(1967)以降のアメリカの〈ニュー・シネマ〉のアンチ・ヒーロー像に移植されたという見方もある(ロバート・ベントンとデービッド・ニューマンによる《俺たちに明日はない》の最初のシナリオは,トリュフォーのために書かれたといわれる)。またスティーブン・スピルバーグは,《野性の少年》でみずから主演して狼少年に人間的なコミュニケーションを教えるイタール教授を演じたトリュフォーの姿に感動し,自作《未知との遭遇》(1977)で,宇宙人とのコミュニケーションをはかるUFO研究学者の役を演じてもらうために,トリュフォーをハリウッドに招いた。…

※「ニューシネマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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