ニューサンス
にゅーさんす
nuisance
煤煙(ばいえん)、汚水、騒音、振動、悪臭、日照妨害などによって、他人の利益を侵害する行為をいう。英米法上の概念で、日本の公害・生活妨害にあたる。
英米法上、ニューサンスには、プライベート・ニューサンスprivate nuisanceとパブリック・ニューサンスpublic nuisanceとがある。前者は私的利益の侵害であって不法行為を構成するのに対し、後者は公衆の利益の侵害であって犯罪を構成する。しかし後者の場合でも、私人が特別損害を立証すれば、差止めまたは損害賠償を請求できる。日本でも、煤煙・汚水・騒音などにより他人の利益を広範に侵害する場合を公害とよび、隣近所の小規模な加害を生活妨害とよんで両者を区別することがあるが、それらは程度の差であって、質的な区別ではない。
わが国の場合、公害・生活妨害は、重過失責任とされる場合のほかは、民法第709条の一般の不法行為の規定(損害賠償の場合)および物権的請求権や人格権(差止請求の場合)によって処理される。たとえば騒音によって生活を妨害された場合には、第709条によって損害賠償を求め、あるいは物権的請求権や人格権を行使して差止めを求め、またはこれらをあわせて請求することが可能である。
[淡路剛久]
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「ニューサンス」の意味・わかりやすい解説
ニューサンス
英米法の概念。不法妨害,財産享有妨害,生活妨害などと訳。不法行為の一類型。音響,臭気,震動,ばい煙,または公然の猥褻行為などによって他人の財産享有,健康,安楽,利便を侵害する行為。公的ニューサンス(公害)と私的ニューサンスに分かれる。その停止や損害賠償の請求が認められる。日本でもこの種の侵害の増加につれて,不法行為となるかどうか議論されている。
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ニューサンス
〘名〙 (nuisance) 英米法上の概念で、直接の物理的な力によらないで、他人の財産享有、健康生活などを侵害すること。たとえば音響、臭気、煤煙による侵害など。生活妨害。〔環境の
衛生学(1962)〕
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デジタル大辞泉
「ニューサンス」の意味・読み・例文・類語
ニューサンス(nuisance)
1 煤煙・汚水・騒音・震動などによって、他人の財産や健康・安楽・利便などを侵害する行為。英米法で発達した概念。生活妨害。
2 ⇒不快害虫
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ニューサンス【nuisance】
生活妨害を表す英米法上の用語。私的生活妨害private nuisanceと公的生活妨害public nuisanceの2種類がある。後者は,公道の妨害,騒音・煙・悪臭等を放散して社会一般に迷惑をかける行為で,犯罪(軽罪)を構成する。公的生活妨害は民事訴訟の対象となりえないが,ただこれにより社会一般と異なる特別な被害を受けた者がある場合には,私的生活妨害となって私訴が可能となる。私的生活妨害は,民事訴訟によって損害賠償または差止めを求めうる(さらに場合によっては自力除去もできる)。
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世界大百科事典内のニューサンスの言及
【害虫】より
… 衛生害虫は刺咬(しこう),吸血あるいは毒物分泌,内部寄生の直接加害のほか有害病原の媒介があり,それ以外にゴキブリ,ハエなどに見られる単なる有害菌の運搬などもある。また,近年都市などでは,室内に無害の昆虫が出ただけで,不快害虫nuisanceとしてきらわれる。貯穀・食品害虫は食用生物および生産物の種類が増えてもあまり多くはならない。…
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