内科学 第10版 の解説
ニコチン酸(ナイアシン)欠乏症(ビタミン欠乏症)
概念
ニコチン酸はミトコンドリアなどの酸化還元反応に必須の補酵素で,損傷されたDNAの修復過程にも関与する.ニコチン酸を中心にビタミンB1,B2,B6欠乏やアミノ酸欠乏を伴う栄養障害性疾患をペラグラ(pellagra)とよぶ.アルコール多飲,カルチノイド症候群,イソニアジドなどが発症要因である.
臨床症状
典型的な症状は認知症(dementia),下痢(diarrhea),皮膚炎(dermatitis)で3Dとよばれる.認知症以外の精神神経症状として幻覚,譫妄,抑うつ,腱反射亢進,パーキンソニズム,痙攣,末梢神経障害などがみられる.
診断
血中ニコチン酸は正常下限にとどまる場合が多い.尿中の代謝産物であるN-methylnicotinamide(NMN)やNMN-6-pyridone-3-carboxylamideの減少,ニコチン酸アミド投与による治療的診断も有用である.
治療
ニコチン酸アミド300~1000 mg/日×5日間の経口投与,または筋注.ほかのビタミンも不足している場合が多いので,ビタミンB1,B2,B6,B12なども併用投与する.通常は治療開始後数日で症状は改善する.[中里雅光]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報