ナンヨウスギ(英語表記)Araucaria

改訂新版 世界大百科事典 「ナンヨウスギ」の意味・わかりやすい解説

ナンヨウスギ
Araucaria

ナンヨウスギ科針葉樹。アフリカを除く南半球に16種が広く分布する。大きな球果をつけ,葉は,1本の葉脈をもった針状葉から,平行脈をもった三角状卵形のものまで,多様である。球果の果鱗複合体は,種鱗と包鱗がほとんど合着しており,包鱗のほうが厚く多肉質で,種鱗の先端だけが小鱗片状の小舌となって分離している。基部に1個の倒生胚珠をつける。雄性球花は多数のおしべ(小胞子葉)が密生し,その下面に8~15個の花粉囊(小胞子囊)がつく。花粉にはマツ科のような気囊はなく,前葉体細胞は13~40個つくられる。種子地中で発芽し,胚軸肥大生長するブンヤ節Bunja(ニュージーランド)と,コルンベア節Columbea(南アメリカ),地表で発芽し,胚軸が肥大生長しないエウタクタ節Eutacta(東南アジア,オーストラリア)とがあり,形態的特徴は地理的分布と一致する。化石としては三畳紀にはじまり,ジュラ紀,白亜紀を通じて,全世界に広く分布していた。イギリスのジュラ紀,日本の白亜紀には,コルンベア型とエウタクタ型の両方のナンヨウスギが混在していた証拠がある。

 チリマツA.araucana (Molina) K. Koch.(英名monkey puzzle)はパタゴニア地方のアンデス山系に分布し,広卵状のかたい葉をもつ。南アメリカにはもう1種パラナマツA.angustifoliaBert.) O. Kuntz.(英名Parana pine)がアルゼンチン北部からブラジル南部にかけて分布し,広披針形の葉をもつ。ともに材質が緻密(ちみつ)で,高級家具,車,船の用材として利用されている。ニュージーランドにはヒロハノナンヨウスギA.bidwilli Hook.(英名bunya-bunya)があり,種子を食用とする。ニューギニアのA.cunninghamii D. Don(英名hoop pine,Moreton Bay pine)が一般にナンヨウスギと呼ばれているもので,建築材として利用される。ノーフォークマツコバノナンヨウスギA.heterophylla Franco(=A.excelsaLamb.)R.Br.ex Ait.)(英名Norfolk Island pine)はノーフォーク島特産で,針状葉が密生した枝ぶりがきれいで,世界各地の都市広場や温室内で栽植されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナンヨウスギ」の意味・わかりやすい解説

ナンヨウスギ
Araucaria cunninghamii; hoop pine; Moreton Bay pine

ナンヨウスギ科の大型常緑針葉樹。広い意味ではチリマツなどナンヨウスギ属 Araucaria総称としてこの名が使われることもあるが,種名としてはニューギニアとオーストラリア東部に産する本種の和名である。高さ 30mあまりになり,長さ 5cmほどの先のとがった披針形の葉を密につける。材は堅く,耐久性があるので建築材に使われる。 (→アラウカリア )  

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナンヨウスギ」の意味・わかりやすい解説

ナンヨウスギ
なんようすぎ

アローカリア

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