ナラ(楢)(読み)ナラ(英語表記)Quercus spp.

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナラ(楢)」の意味・わかりやすい解説

ナラ(楢)
ナラ
Quercus spp.

北半球の温帯から熱帯の高地に分布するブナ科カシQuercusの高木のうち,コナラ (小楢)ミズナラ (水楢)ナラガシワなど日本に産する落葉性の種類の総称。同属の植物でも葉質の硬い,常緑性の種類は通常カシと呼んで区別する。しかし分類学上のナラとカシの差は堅果,いわゆる「どんぐり」の基部につく殻斗 (かくと) の包鱗のあり方で,カシ類が数層の横輪状になるのに対し,ナラ類は包鱗が癒着せず,敷瓦状に並ぶ点が異なる。その意味では西日本の海岸に生じるウバメガシ Q. phillyraeoidesは常緑ではあるがナラ類に入れられる。普通単にナラと呼ぶときはコナラをさすことが多いが,用材としてはミズナラが重視される。この仲間の葉は互生し縁に鋸歯がある。雌雄同株。4~5月頃,新葉下部に紐状の雄花穂,上部の葉のつけ根に短い直立した雌花穂をつける。どんぐりと呼ばれる堅果は楕円または球形で,基部を包む椀形の総包は多くの鱗片が重なる。ナラ材は重硬,緻密で,家具,船舶,建築などのほか洋酒の樽材,シイタケの原木薪炭材となる。また,樹皮や葉を染色に用いることもある。

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百科事典マイペディア 「ナラ(楢)」の意味・わかりやすい解説

ナラ(楢)【ナラ】

ふつうコナラとミズナラ(ときにはナラガシワを含めることもある)をさす。北海道〜九州の山野にはえるブナ科の落葉高木。樹皮は灰褐色〜灰白色で縦に浅い割れ目が入る。葉は枝先に集まってつき,倒卵形〜倒披針形,下面は淡緑色〜灰白色,縁には鋸歯(きょし)がある。雌雄同株。4〜5月開花。雄花穂は新枝の下部から出て尾状にたれ下がり,多数の黄褐色の小花をつける。雌花穂は新枝の上部の葉腋に数個つく。果実は長楕円形のどんぐりで,その年の秋に褐色に熟す。コナラは葉が小さく長さ7〜10cm,明らかな葉柄がある。ミズナラはコナラに比べ,葉は大きく長さ7〜15cm,葉柄はきわめて短いかほとんどなく,鋸歯は大型で鋭く,果実のどんぐりは大きい。より高地にはえる。ともに材を建築材,器具,船舶用材,薪炭とする。
→関連項目小田代原

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