ナフトールスルホン酸(読み)ナフトールスルホンサン

化学辞典 第2版 「ナフトールスルホン酸」の解説

ナフトールスルホン酸
ナフトールスルホンサン
naphtholsulfonic acid

C10H8O4S(224.24).1-および2-ナフトールのスルホン酸誘導体の総称.種々の異性体があるが,いずれも染料合成の中間体であり,工業的に重要なものをあげる.【】1-ナフトールスルホン酸:
(1)1-ナフトール-2-スルホン酸.1-ナフトールを濃硫酸スルホン化すると,4-スルホン酸とともに生成する.融点250 ℃ 以上.水に可溶,エーテルに不溶.塩化鉄(Ⅲ)で青色を呈する.[CAS 567-18-0] 
(2)1-ナフトール-4-スルホン酸.ネビル-ウィンテル酸ともいう.1-ナフチルアミン-4-スルホン酸を亜硫酸水素ナトリウムと加熱すると得られる.板状晶.分解点170 ℃.そのナトリウム塩を加熱すると,2-スルホン酸塩に転位する.[CAS 84-87-7] 
(3)1-ナフトール-5-スルホン酸.L酸ともいう.ナフタレン-1,5-ジスルホン酸のアルカリ溶融で得られる.融点110~112 ℃.直接染料の中間体.硝酸イオン検出のための分析用試薬として用いられる.[CAS 117-59-9] 
(4)1-ナフトール-8-スルホン酸.1-ナフチルアミン-8-スルホン酸のジアゾ化加水分解で得られる.融点106~107 ℃.塩化鉄(Ⅲ)で緑色を呈する.[CAS 117-22-6]【】2-ナフトールスルホン酸:
(1)2-ナフトール-1-スルホン酸.ステビン酸ともいう.2-ナフトールの低温スルホン化で得られる.塩化鉄(Ⅲ)で赤色を呈する.アニリン塩は融点124 ℃.[CAS 567-47-5] 
(2)2-ナフトール-6-スルホン酸.シェファー酸ともいう.2-ナフトールに濃硫酸を作用させると得られる.融点125 ℃(一水和物),167 ℃(無水和物).水,エタノールに易溶.[CAS 93-01-6] 
(3)2-ナフトール-7-スルホン酸.F酸ともいう.ナフタレン-2,7-ジスルホン酸を水酸化ナトリウムと融解すると得られる.融点115~116 ℃.直接染料の中間体.[CAS 92-40-0] 
(4)2-ナフトール-8-スルホン酸.クロセイン酸ともいう.2-ナフトールの濃硫酸によるスルホン化で2-ナフトール-6-スルホン酸とともに得られる.アゾ染料の中間体.[CAS 132-57-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナフトールスルホン酸」の意味・わかりやすい解説

ナフトールスルホン酸
なふとーるするほんさん
naphtholsulfonic acid

ナフタレン環に、ヒドロキシ基-OHとスルホン酸基-SO3Hとをもつ化合物の総称。ヒドロキシ基とスルホン酸基の位置の組合せにより14種の異性体が存在し、その約半数が染料の合成中間体としての用途をもつ。しかし、ナフトールスルホン酸自体はいずれも無色固体であり、塩の水溶液は塩化鉄(Ⅲ)により青色に呈色する。概して、吸湿性で水やエタノール(エチルアルコール)に溶けやすく、ベンゼンには溶けにくい。1分子中に2個のスルホン酸基をもつナフトールジスルホン酸をも含む総称として用いられることもある。染料の原料となるおもなナフトールスルホン酸類をに示す。

[廣田 穰 2015年3月19日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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