ドライヤー(英語表記)Carl Theodor Dreyer

デジタル大辞泉 「ドライヤー」の意味・読み・例文・類語

ドライヤー(dryer/drier)

乾燥器。「洗濯物ドライヤーに入れる」「ヘアドライヤー

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精選版 日本国語大辞典 「ドライヤー」の意味・読み・例文・類語

ドライヤー

〘名〙 (drier, dryer) 乾燥器。多く、髪を乾かしたり、髪にくせをつけたりするのに用いるヘアドライヤーをいう。
由利旗江(1929‐30)〈岸田国士〉この役割「一金貳拾五円也 ドライヤア」
※細雪(1943‐48)〈谷崎潤一郎〉上「頭からドライアーを被せられてゐる姿」

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改訂新版 世界大百科事典 「ドライヤー」の意味・わかりやすい解説

ドライヤー
Carl Theodor Dreyer
生没年:1889-1968

デンマーク映画監督。デンマーク映画最大の巨匠であり,ジャンヌ・ダルクの苦悩と殉教の意義をクローズアップの連続で彼女の内面に分け入るようにして描き〈サイレント映画最後の傑作〉とされる《裁かるるジャンヌ》(1928),魔女狩りの犠牲となる女性を主人公に17世紀の社会を精神史的に再現した《怒りの日》(1944),狂人と思われていた男の祈りによって一人の女性が死からよみがえる《奇跡》(1955)など,人間の精神の営み,とりわけ信仰について探求した作品は映画史上の特異な存在となっている。

 コペンハーゲン生れ。ジャーナリストをへて,1913年に脚本家としてノルディスク社に入社。18年に《裁判長》で監督となる。つづいて,D.W.グリフィス監督の《イントレランス》(1916)の影響をうけ,四つの時代における人間の背信行為を描いた《サタンの書の数頁》(1919)を撮る。《牧師の未亡人》(1920)はスウェーデンで,《ミヒャエル》(1924)はドイツで,《あるじ》(1925)はデンマークに戻って,《裁かるるジャンヌ》はフランス,トーキー第1作の《吸血鬼》(1932)はドイツとフランスというぐあいに国際的監督として活躍した。ドイツの〈室内劇(カンマーシュピール)〉,フランスの〈アバンギャルド映画〉などの影響を吸収しつつスタイルを模索するが,終始一貫していたのは〈精確なセット〉と端役に至るまでの出演者の〈顔〉を重視し,観客に映像の細部のニュアンスまで感じとるよう緊張を強いる画面づくりで,その緊張度は作品を追って高まった。《吸血鬼》から12年ぶりに監督した長編《怒りの日》からは,1シーン=1カットの長回し,カメラと俳優の極度にゆっくりとした動きにより〈神秘性〉を漂わせた独特のスタイルを築いた。

 作品の数は少なく,〈愛こそすべてだ〉ということばで終わる最後の作品《ガートルード》(1964)に至るまでの長編は14本。キリストを描く映画の製作準備中に死去した。このシナリオは《カール・ドライヤーのイエス・キリスト》として,のち72年に出版されている。短編も10余本つくっているが,その中で交通安全キャンペーンのためにつくられた《彼らはフェリーに間に合った》(1948)は傑作短編として名高く,スティーブン・スピルバーグがこれをヒントに《激突!》(1972)をつくったことはよく知られている。
執筆者:

ドライヤー
drier

一般には乾燥器(ヘアドライヤーなど)や乾燥剤(塗料,インキなどの硬化乾燥を促進させるために用いる工業薬品)のことだが,ここでは後者について述べる。乾性油,半乾性油,または不飽和結合をもつ有機材料を原料とした塗料やインキなどは,空気中で自動酸化によって分子間に橋かけ重合が起こり,三次元化して塗膜を形成する。ドライヤーはこの際生成する過酸化物の分解を促進して連鎖的に反応を進める触媒作用をもつもので,ドライヤー自身は酸化→還元→酸化を順次繰り返す。コバルト,マンガン,鉛などの無機酸および有機酸の塩が用いられるが,多用されているのは樹脂酸塩,リノール酸塩,ナフテン酸塩などの油溶性の有機酸塩である。最近は比較的安価に合成される2-エチルヘキサノン酸塩(オクトエートドライヤーという)なども用いられる。のり状(ホウ酸塩,脂肪酸塩を乾性油と練り合わせたもの)と液状(樹脂酸塩などを石油系溶剤に溶かしたもの)があるが,おもに後者が用いられている。乾燥硬化の活性は金属イオン種により異なり,たとえばコバルト塩は活性が大で酸化活性が強いため,塗膜は空気に接する表面から,速やかに硬化する。マンガン塩はコバルトに次いで高活性で,生成膜は強靱で硬い。鉛塩は酸化作用は弱いが,重合作用が大きい。このため硬化は塗膜内部から進行する特徴がある。実際にはこれらの乾燥剤は複合して使用される場合が多く,その活性の特徴を生かして良好な塗膜とする。なお現在は,鉛塩については安全性の面を考慮して,その使用を制限している。
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百科事典マイペディア 「ドライヤー」の意味・わかりやすい解説

ドライヤー

(1)乾燥剤とも。塗料,印刷インキ等の乾燥促進剤。油脂中の不飽和脂肪酸を酸化,重合,膠化(こうか)させて乾燥させるもので,コバルト,マンガン,鉛,亜鉛等の酸化物,水酸化物,樹脂酸塩,不飽和脂肪酸塩,ナフテン酸塩等が用いられる。(2)→ヘアドライヤー
→関連項目乾燥剤金属セッケン工業用セッケン(石鹸)塗料二酸化マンガンワニス

ドライヤー

デンマークの映画監督。ジャンヌ・ダルクの苦悩と殉教をクローズアップの連続で描いたサイレント映画《裁かるるジャンヌ》(1928年)によって世界的に知られた。以後,人間精神の映像的表現をめざして細部にまで緊張感をただよわせた《吸血鬼》(1932年),《怒りの日》(1943年),《ガートルード》(1964年)等を作った。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドライヤー」の意味・わかりやすい解説

ドライヤー
Dreyer, Carl Theodor

[生]1889.2.3. コペンハーゲン
[没]1968.3.20. コペンハーゲン
デンマークの映画監督。ジャーナリストを経て映画界へ入り,1920年『裁判長』 Praesidentenの監督としてデビュー。北欧的な神秘主義とリアリズムの強い作品が多い。『裁かるるジャンヌ』 La Passion de Jeanne d'Arc (1928) は無声映画期の代表作。

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世界大百科事典(旧版)内のドライヤーの言及

【サイレント映画】より

…戦後の混乱したドイツに生まれた〈表現主義〉の映画《カリガリ博士》(1919)が世界の注目を浴びたころ,ドイツの哲学者コンラート・ランゲは《現在および未来における映画》(1920)の中で,芸術は〈静〉で〈動〉を表現するというイリュージョンで成り立つものであるから,映画が〈動く画面〉を基礎とするかぎり芸術とは無縁であると映画の芸術性を否定したが,20年代を通じて世界の各国で〈サイレント映画〉の芸術性が追究された。例えばフランスでは,アベル・ガンスが《鉄路の白薔薇》(1923)をつくり,グリフィスのモンタージュを視覚的なリズムによる心理的なモンタージュに発展させ,カール・ドライヤーは《裁かるるジャンヌ》(1928)で大胆なカメラアングルと,クローズアップを最大限に活用したモンタージュでそれまでの常識を破り,〈サイレント映画〉形式の一つの頂点を示した。また,ドイツ映画の黄金時代(古典時代)を代表するフリードリヒ・W.ムルナウの《最後の人》(1925)は,文学的な借物であるタイトル(字幕)を排除し,カメラを自由奔放に駆使して映画以外の手段では不可能な映画的表現を開拓した。…

【デンマーク映画】より

…世界映画史上,デンマークはまず,接吻とバンプvampを生んだ国として知られ,次いでカール・ドライヤーという巨匠の名に値する大監督を生んだ国として評価される。 1906年に世界で最初のメジャー(大手)の映画会社の一つ,ノルディスク社がオーレ・オルセンによって創立され,10年代には早くも最初の黄金時代を迎える。…

※「ドライヤー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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