ドスパソス

精選版 日本国語大辞典 「ドスパソス」の意味・読み・例文・類語

ドス‐パソス

(John Roderigo Dos Passos ジョン=ロドリゴ━) アメリカ小説家急進主義的な立場から、映画技法などを取りいれた前衛的な手法を駆使した社会小説を書いた。代表作「USA」。(一八九六‐一九七〇

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デジタル大辞泉 「ドスパソス」の意味・読み・例文・類語

ドス‐パソス(John Roderigo Dos Passos)

[1896~1970]米国の小説家。第一次大戦体験を描いた「三人の兵士」で注目され、米国社会を批判的に描く作品を発表し続けた。作「USA三部作など。

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改訂新版 世界大百科事典 「ドスパソス」の意味・わかりやすい解説

ドス・パソス
John Dos Passos
生没年:1896-1970

アメリカの小説家。両親が内縁関係であったため,著名な弁護士である父に愛されながらも16歳まで認知されなかったこと,少年時代世界各地を旅行したことが,彼の文学に影響を与えた。ハーバード大学で審美主義の洗礼をうける。野戦衛生部隊員として第1次大戦に参戦した体験から,軍隊を批判した《ある男の入門--1917年》(1920),《三人兵士》(1921)を出版。大戦後は〈失われた世代(ロスト・ジェネレーション)〉の作家たちと交わり,パリ,スペインなどを転々とし,《ロシナンテ再び旅に》(1922),《オリエント急行》(1927)などの旅行記を書く。1922年帰国。印象主義の手法を用い多数の視点から滅びの都市ニューヨークを描く傑作《マンハッタン乗換駅》(1925)で認められる。1920年代半ばからサッコ=バンゼッティ事件に関心をよせてデモに参加。投獄されたり,左翼雑誌《ニュー・マッシズ》の創刊に尽力し,共産党に接近した。プロレタリア演劇運動にも関係し,《航空会社》(1929)などを発表。〈歴史の建築家〉という自負をこめて発表した《北緯42度線》《1919年》《財閥》の3部からなる《U.S.A.》(1938)により,不況時代の代表的作家と認められたが,組織のためには個人を犠牲とする共産党に失望し,1930年代半ばには左翼陣営を去る。共産党に裏切られる青年の物語《ある青年の冒険》(1939),ヒューイ・ロングを思わせる政治家の登場する《ナンバー・ワン》(1943),ニューディール政策の行詰りを描く《大いなる企画》(1949)からなる三部作《コロンビア特別区》(1952),《U.S.A.》の手法を用いた《世紀の半ば》(1961)などもあるが,《U.S.A.》には及ばない。ほかに,自伝《最良の時代》(1966),評論集《機会と抗議》(1964),歴史研究《ウィルソン氏の戦い》(1962),遺稿となった小説《世紀の引潮》(1975)などがある。共産党からの転向,アメリカの伝統への復帰に思想的成熟を見るかどうかにより,ドス・パソスの評価は大きく分かれている。
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世界大百科事典(旧版)内のドスパソスの言及

【アメリカ文学】より

…フォークナーも特異な文体家であるが,代表作《響きと怒り》(1929)などにより,南部社会の深層を〈意識の流れ〉の手法の開拓やトウェーン伝来の語り口を通じてみごとに剔出して見せた。ドス・パソスは《U.S.A.》(1930‐36)その他でアメリカの政治・社会の状況にメスを入れた。 29年の大恐慌を境に,頽廃的ムードの中にも繁栄していた1920年代の社会は冷たく暗い幻滅感と危機感をたたえた社会へと変わり,社会的関心を第一とする作品が目につくようになる。…

【反ファシズム】より

…日独伊三国軍事同盟締結と大政翼賛会,大日本産業報国会の結成は,40年のことであったが,このときにはすでに反ファシズムの組織と言論は皆無に近かった。【鈴木 正節】
【国際的な反ファシズム文化運動】
 国際的な反ファシズム文化運動の先駆としては,反戦を掲げてロマン・ロランとバルビュスが呼びかけ,ゴーリキー,アインシュタイン,ドライサー,ドス・パソスらが発起人に名を連ねる,1932年8月アムステルダムの国際反戦大会に29ヵ国2200名を集め,翌年パリで第2回大会を開催した〈アムステルダム・プレイエル運動〉,フランスの急進社会党代議士ベルジュリが主唱し,J.R.ブロック,ビルドラックらの協力した33年5月結成の〈反ファシズム共同戦線〉,ジッド,マルローらによる〈革命作家芸術家協会〉の33年における反ファシズム運動などがあげられる。しかし,それが政治的立場を超えた知識人の統一運動として定着するのは,34年の2月6日事件をまたなければならない。…

【U.S.A.】より

…アメリカの小説家ドス・パソスの小説。《北緯42度線》(1930),《1919年》(1932),《ビッグ・マネー》(1936)の三部作が,1938年《U.S.A.》として一巻にまとめられた。…

※「ドスパソス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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