日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ドイツ農民戦争(エンゲルスの著作)
どいつのうみんせんそう
Der deutsche Bauernkrieg
エンゲルスの著作。1850年に『新ライン新聞・政治経済評論』第5・6合併号に掲載したもの。ドイツの三月革命(1848~49)の敗北から2年間にわたる革命運動の沈滞した状況下にあって、大農民戦争(1524~25)の時期に力強く闘ったドイツ農民の姿を描いて労働運動を鼓舞するとともに、現在当面している敵も300年前のときとたいして変わっていないという点で、その闘いが容易でないことを労働者階級に自覚させる目的で書かれたもの。
農民戦争においては農民と都市下層民が封建的勢力に対して統一的な抵抗を展開できず、それが敗北の一因となったことを指摘し、農民戦争と三月革命ではともに領邦割拠した地方諸侯が地方ごとに一揆(いっき)を撃破した点、また上層市民層が断固として農民の側について闘争しなかった点において類似していることをあげ、いまや革命の担い手としての労働者階級が登場してきた点に、今後のドイツにおける進歩の展望をみいだそうとしている。
[田中 浩]
『伊藤新一訳『ドイツ農民戦争』(大月書店・国民文庫)』
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