トルコ民族(読み)トルコみんぞく(英語表記)Türk

山川 世界史小辞典 改訂新版 「トルコ民族」の解説

トルコ民族(トルコみんぞく)
Türk

トルコ共和国のほか,ヨーロッパの一部,シベリア,中央アジアなどに住み,アルタイ語族に属する民族。前3世紀頃丁零(ていれい)の名で匈奴(きょうど)の北にいてこれに服属。5世紀の初めには高車(こうしゃ)と呼ばれて柔然(じゅうぜん)に服属し,同世紀後半に独立してジュンガリアに建国した。7世紀初頭には鉄勒(てつろく)と総称されてバイカル湖の南からカスピ海の西にかけて分布。このうちアルタイ山脈の西南にいたものが6世紀中頃柔然から独立して突厥(とっけつ)を建てた。これは東西に分裂し,東部はウイグルに受け継がれ,西部は7世紀末に滅亡した。ウイグルは9世紀中頃に同じトルコ系のクルグズに攻撃されて中央アジアへ移り,チュー河畔にカラハン朝を建国した。これらのトルコ民族はしだいに定着化して,それまで中央アジアに支配的だったアーリヤ系民族をトルコ化した。西方へ移ったトルコ民族は奴隷,傭兵としてイスラーム世界に進出し,アッバース朝の衰えに乗じて,西アジアの各地に独立王朝を建て,北インドにも進出した。このなかセルジューク朝は,11世紀の中頃に建国して,ホラーサーンを中心にイラン,シリア,アナトリアを支配し,アナトリアのトルコ化を進めた。そののち,オスマン帝国バルカン北アフリカ版図を広げたが,第一次世界大戦後崩壊し,アナトリア,トルコ民族を中心とする現在のトルコ共和国成立ケマル・アタテュルクによって近代化が促進された。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「トルコ民族」の解説

トルコ民族
トルコみんぞく
Türk

テュルク諸語を使用する民族の呼称。現在,ユーラシア大陸諸地域に分布
原住地には定説がないが,中国史では前2世紀丁零 (ていれい) の名で匈奴 (きようど) に服属していたが,5世紀には高車 (こうしや) と呼ばれ,柔然 (じゆうぜん) に属した。6世紀ごろ新たなトルコ系遊牧民が突厥 (とつけつ) として独立し,7世紀からは鉄勒 (てつろく) と呼ばれて中国北西部の勢力となった。8世紀に回紇 (かいこつ) (ウイグル) が強盛となり,唐を侵略したが,9世紀末には各地に分散し,特に西域にはいったものはイスラーム化した。西アジアでは11世紀にはいると,セルジューク朝が強大となってアッバース朝に接近し,その首長スルタン称号を受けて十字軍に対抗した。セルジューク朝の滅亡後はオスマン帝国が13世紀におこり,一時ティムールと戦って壊滅したが,その後再興し,ビザンツ帝国を滅ぼしてアジア・アフリカ・ヨーロッパにまたがる大帝国を建設した。しかし17世紀前半ごろからヨーロッパ諸国の侵略にさらされ,第一次世界大戦の敗北でその領土は小アジア半島に限られた。1923年以後はトルコ共和国がトルコ民族の主要な国家となっている。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android