トマ・ピケティ(読み)とま・ぴけてぃ

知恵蔵 「トマ・ピケティ」の解説

トマ・ピケティ

フランスの経済学者。1971年生まれ、パリ近郊クリシー出身。主要研究テーマは経済格差と不平等の問題。2013年に出した『21世紀の資本(Capital in the Twenty-First Century)』の英訳版が翌14年にアメリカで出版されると、ノーベル賞受賞経済学者のR.ソロー、P.クルーグマンや元財務長官R.サマーズらから絶賛され、700頁にも及ぶ学術書にもかかわらず異例の大ベストセラーになった。
約15年をかけて収集した20カ国以上のデータ(18世紀以降のマクロな経済資料)を基に、資本主義がもたらした不平等拡大のメカニズムを実証的に暴き出し、健全で民主的な社会の再生には、国境を超えた公平な税制度(具体的には資産への累進課税)の導入が必要と提言する。14年12月には日本語版も刊行され、15年1月に初来日すると「ピケティ現象」と呼ばれるほど大きな話題になった。
ピケティは超難関のパリ高等師範学校に入学し、1993年にEHESS(社会科学高等研究院)とLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)で博士号を取得。その後2年間、米マサチューセッツ工科大で教鞭をとった後、2006年に設立されたPSE(パリ経済学校)の初代校長に就任した。07年の大統領選挙では、社会党ロワイヤル候補の経済ブレーンを務めている。政治的には穏健なリベラル派と見られるが、社会党が導入した週35時間労働制に異議を唱えたこともあり、国内の左派からは批判の目も向けられている。15年1月、社会党オランド政権は仏最高勲章のレジオン・ドヌール賞にノミネートしたが、ピケティは「名誉を決めるのは政府役割ではない。経済成長に集中すべき」と述べ、受賞を拒否した。

(大迫秀樹 フリー編集者/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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