トビリシ(読み)とびりし(英語表記)Тбилиси/Tbilisi

精選版 日本国語大辞典 「トビリシ」の意味・読み・例文・類語

トビリシ

(Tbilisi) グルジアの首都。四世紀に城塞都市として建設され、一二世紀にグルジアの首都となり、一九二二~三六年にはザカフカス連邦の首都。現在もバクーとともに南カフカスの中心都市として発展している。

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デジタル大辞泉 「トビリシ」の意味・読み・例文・類語

トビリシ(Tbilisi)

ジョージア共和国の首都。カフカス山脈の南麓にある、5世紀以来の古都。工業が盛ん。旧称チフリス。人口、行政区111万(2009)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トビリシ」の意味・わかりやすい解説

トビリシ
とびりし
Тбилиси/Tbilisi

ジョージア(グルジア)の首都。人口110万3500(2002)。カフカス山脈南麓(なんろく)の広い裾野(すその)と、裾野を刻んで南流するクラ川河谷の標高500メートル前後の地に市街が広がる。名称はジョージア語の「ぬるい水」の意で、クラ河谷の温泉湧出(ゆうしゅつ)によると伝えられる。旧称チフリスТифлис/Tiflis。ザカフカス鉄道に沿い、支線を分岐し、カフカス山脈を越えるジョージア軍用道路の南の終点にあたる交通の要衝古来、金属工芸、武具などの工房が集まっていたが、現在ではジョージア最大の工業集積地である。工作機械、電気機器、無線機、航空機、自動車(おもに貨物用)、電気機関車、農業機械などの工場がある。伝統工業、食品工業も盛んで、織物、皮革、ぶどう酒とブランデー(多くを輸出)、たばこ、陶磁器、金属工芸品などがある。1966年地下鉄が開通し、坂の多い街路とムタツミンダ丘にはケーブルカーがある。ジョージアの学芸・文化の中心地で、科学アカデミー、総合大学、高等教育機関、ジョージア民族美術館、劇場など多数の文化施設が置かれている。

渡辺一夫

歴史

紀元前3000年以前から集落があったとされるが、年代記には紀元後4世紀に初めて記される。東西・南北交通の要地として各地の文化が交錯した。4~5世紀に東ジョージアの有力な集落となり、6世紀にはその首都となって、ロシアよりはるかに早くキリスト教を受け入れた。その後、ペルシアトルコモンゴルアラブなどの侵攻を受けた。その間、12世紀にはダビデ4世統治の王国が繁栄した。19世紀初頭、ロシアの支配下に入り、そのザカフカス統治の中心となった。1921年、ソビエト政権のもとでジョージア・ソビエト社会主義共和国の成立とともにその首都となる(1991年からは旧ソ連邦から独立したジョージアの首都)。旧市街は市の南東部にあり、城壁、曲折した細い道路、中世の建築物などが残る。新市街は丘陵斜面に階段状に並び、赤茶色の屋根瓦(がわら)をのせた家屋が独特の風景をみせている。歴史的建築物に富み、旧市街に含まれるナリカラ要塞(ようさい)、メテヒ教会(1278創建)、シオン教会(6世紀創建)、アンチスハ教会(6世紀創建)などがある。

[渡辺一夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「トビリシ」の意味・わかりやすい解説

トビリシ
Tbilisi

ザカフカス地方,グルジア共和国の首都。人口106万(2003)で,旧ソ連邦でも有数の工業,文化,学術の中心都市の一つ。地名は温かい鉱泉(〈トビリ〉はグルジア語で〈温かい〉の意)に由来する。1936年以前はロシア風にティフリスTiflisと呼ばれた。市街は大カフカス山脈の山麓のクラ川両岸に広がる。考古学上,前4000-前3000年にはすでに人が住んでいたことが知られ,年代記では4世紀に要塞都市として言及されている。5世紀後半ワフタング1世の下で東グルジアの中心都市に成長,6世紀初めグルジアの主都となる。7世紀アラブ,9~11世紀にはハザル,イラン,セルジューク・トルコの侵攻をうけた。1122年ダビト4世が解放し,統一国家の首都とするが,13世紀以降モンゴルなどの侵攻をうけ,15世紀末以降イラン,トルコの角逐の場となった。1801年,ロシアの東グルジア併合後はカフカス支配の拠点となり,45年カフカス総督府がおかれる。以後,バクーと並び,ザカフカスの二大中心都市として発展し,プーシキン,レールモントフらの作品の舞台ともなった。革命後の今日,機械・電気・食品工業,軽工業が盛ん。古い伝統をもつ劇場,オペラハウスがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トビリシ」の意味・わかりやすい解説

トビリシ
Tbilisi

ジョージア(グルジア)の首都。 1936年までチフリス Tiflis。標高 400~500mのトビリシ盆地を流れるクラ川に臨む。市街は同川の両岸に沿って約 30kmにわたって延びる。 458年ジョージアの古王国イベリアの首都がムツヘタからここに移されたときに始まる古都で,ザカフカジエ (後カフカス地方) の東西交通の要地にあたることから,しばしば他国の攻撃を受け,占領された。 1122年グルジア王国の首都となったが,その後もモンゴル,トルコ,ペルシアなどの攻撃を受け,1801年ロシアに併合された。 19世紀後半,黒海沿岸のポーチ,およびカスピ海沿岸のバクーと鉄道で結ばれ,市の発展が促された。 1921年グルジア=ソビエト社会主義共和国の首都となり,1991年独立したグルジアの首都となった。政治,経済,文化の中心地として発展し,機械 (工作機械,電気機関車,電機) ,繊維 (絹織物,毛織物,メリヤス) ,皮革・製靴,食品 (ワイン,ブランデー,茶,食肉,乳製品,菓子) ,家具,合板などの工場が立地する。またトビリシ大学 (1918) をはじめとする多数の大学,科学アカデミー,博物館,劇場などの教育・文化施設がある。旧市街にはシオニ大聖堂 (5世紀) ,メテヒ城と聖堂 (13世紀) ,アンチスハチ聖堂 (6世紀) などが保存されている。鉄道,ハイウェーの分岐点で,空港もある。 1966年地下鉄が開通した。人口 112万2300(2010)。

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百科事典マイペディア 「トビリシ」の意味・わかりやすい解説

トビリシ

ジョージアの首都。旧名チフリス。クラ川に面し,軍用ジョージア街道の終点。機械,食品加工,織物,建設材料などの工業が行われる。5世紀後半以来の古都で,12世紀以後ジョージアの中心。ナリカラの砦(とりで),メテヒ廟などの古跡がある。1801年東ジョージアのロシア併合後は,ロシアによるカフカス支配の拠点となり,1845年カフカス総督府がおかれた。以後,バクーとともにザカフカスの2大中心都市となる。ペレストロイカ期の1989年,ジョージアの独立回復をめざす大集会をソ連軍が武力制圧して惨事を生んだトビリシ事件は,この時期の民族運動への最も大規模な弾圧であった。117万人(2012)。
→関連項目カフカスジョージアムツヘタ

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