トビコバチ(読み)とびこばち

改訂新版 世界大百科事典 「トビコバチ」の意味・わかりやすい解説

トビコバチ (跳小蜂)
encyrtid parasite

膜翅目トビコバチ科Encyrtidaeの昆虫総称。小さい寄生バチで,体長1~2mm内外。頭部は幅広く半球形のものが多く,触角は短く8~12節。中肢脛節けいせつ)に大きな距棘(きよきよく)があり,これで跳ぶのでトビコバチといわれる。世界に広く分布し,種類数も多く,日本には120種以上分布する。おもにカイガラムシ,キジラミなどに寄生するが,ガの幼虫テントウムシの幼虫,ヒラタアブなどに寄生するものも知られている。マルカイガラムシ類に寄生するフタスジトビコバチComperiella bifasciata,タマカタカイガラムシに寄生するタマカタカイガラトビコバチMetaphycus tamakatakaigara,カメノコロウムシに寄生するカメノコロウトビコバチMicroterys clauseniなどがいる。天敵として有力なものも多く,クワコナカイガラムシに寄生するルリコナカイガラトビコバチClausenia purpurea,クワコナカイガラトビコバチPseudaphycus malinusは日本からアメリカに輸出された。ルビーアカヤドリトビコバチAnicetus beneficusは1945年ころ九州に発見されたが,これを各地に導入してルビーロウカイガラムシを激減させた。キンウワバの幼虫に寄生するキンウワバトビコバチLitomastix maculataは多胚生殖をして,1匹の寄主から約3000匹も羽化する。ウルグアイジャガイモガトビコバチCopidosoma koehleriとチリージャガイモガトビコバチC.desantisiは,やはり多胚生殖により1匹のジャガイモガの幼虫に30~40個体が成育する。有力天敵として南アメリカより日本に輸入され,ジャガイモガの防除に役だっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トビコバチ」の意味・わかりやすい解説

トビコバチ
とびこばち / 跳小蜂

節足動物門昆虫綱膜翅(まくし)目トビコバチ科Encyrtidaeの昆虫の総称。体長1~2ミリの小形の寄生バチで、天敵として重要な種類が多い。世界に広く分布し、日本では約60属、百数十種が知られる。体色は変化に富み、金属光沢をもつものが多い。雌と雄とで形態、色彩が異なるものが多い。中脚の脛節(けいせつ)には太くて長い距(きょ)がある。各種の昆虫類の卵、幼虫、蛹(さなぎ)に内部寄生するが、なかには、ほかの寄生コバチに寄生して第二次寄生バチとなるものもある。繁殖は雌雄による両性生殖が普通であるが、雌だけで繁殖する種もある。日本産のおもな種類は次のとおり。アカマルカイガラムシやトビイロマルカイガラムシに寄生するフタスジコバチComperiella bifasciata、ルビーロウムシの有力天敵であるルビーアカヤドリコバチAnicetus beneficus、クワコナカイガラムシに寄生するクワコナカイガラヤドリコバチPseudaphycus malinus、フタトゲチマダニに寄生するダニヤドリトビコバチHunterellus sagarensisなどがある。

[立川哲三郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トビコバチ」の意味・わかりやすい解説

トビコバチ
Encyrtidae

膜翅目トビコバチ科の昆虫の総称。微小な寄生蜂で,体長は普通1~2mm。中胸前側板は大きく,中胸後側板をおおい,彫刻がない。中胸背板は丸みがあり,三角板は中胸楯板の前縁より前方に伸びない。翅脈は単純で,前翅の前縁脈は亜前縁脈より短く,しばしば点状になる。触角は多様であるが環状節を欠く。肢の 跗節は5節。他の昆虫類の卵,幼虫,蛹などに寄生するため,害虫の重要天敵となるものが多い。宿主は昆虫類のすべての目 (もく) に及ぶ。

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