トゥールーズ(英語表記)Toulouse

精選版 日本国語大辞典 「トゥールーズ」の意味・読み・例文・類語

トゥールーズ

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デジタル大辞泉 「トゥールーズ」の意味・読み・例文・類語

トゥールーズ(Toulouse)

ツールーズ

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改訂新版 世界大百科事典 「トゥールーズ」の意味・わかりやすい解説

トゥールーズ
Toulouse

フランス南部,オート・ガロンヌ県の県都。人口39万0174(1999)。ミディ・ピレネー地域の中心地アキテーヌ盆地地中海ラングドック平野,マシフ・サントラル(中央山地)とピレネー山脈を結ぶ地理的要衝に位置し,ガロンヌ川に面する。都市人口ではフランス第4位。19世紀初めに約5万にすぎなかった人口は,1936年には20万,46年には26万,62年には33万と増加した。今日では郊外に都市人口が拡大し,南西15kmの所にニュータウン,ル・ミライユLe Mirailが建設されている。

 古名はトロサTolosaで,ローマ帝国の属州ガリア・ナンボネンシス下のローマ都市として発達,5世紀には西ゴート族の首都となり,カロリング期にはアキテーヌ王国の首都。9~13世紀初頭レーモンRaymont伯の下で栄え,その宮廷の名はヨーロッパに広く聞こえた。トゥールーズは,アルルに発しサンチアゴ・デ・コンポステラへ向かう巡礼路に位置し,当時としては例外的な規模をもつサン・セルナン教会が建造された(11世紀)。13世紀初頭フランス南西部に広まっていたカタリ派懲罰を目的としたアルビジョア十字軍の争いの中で荒廃したが,1271年フランス国王領に帰した。16世紀の初め大青(青色染料の原料)栽培のブームにのって繁栄を迎え,同市には赤煉瓦の広壮な邸宅が数多く建てられた。フランスでも有数の歴史的観光資源をもつ都市である。

 トゥールーズは,長く農業地域の中心として,商業および行政・教育・宗教・文化などいわゆる第3次産業が都市の発展の基礎であった。しかし第2次大戦後工業化が進み,なかでも今日の技術の最先端をゆく航空機産業,エレクトロニクスなどの工場が郊外に立地している。そのほか弾薬,火薬,タバコなどの国営工場,化学肥料工場,食料品工場などがある。13世紀に起源をもつトゥールーズ大学はフランスでも最も古い大学の一つに数えられる。大学,高等専門学校,研究所の存在は最新の工業技術の発展に寄与しており,なかでも航空・宇宙高等専門学校はフランス最高のレベルを有する。航空機とトゥールーズの関係は深く,これまでにもキャラベル,コンコルドなどの名機を生んできた。アフリカ,南米との定期航空路開設の基地となったことでも知られ,パイロットのなかにサンテグジュペリのいたことは有名である。
執筆者:

1080年ころ起工されたサン・セルナン教会は,フランスのロマネスク建築中最大の規模をもつ(全長115m)。石造で始められ途中で煉瓦に変わる。周歩廊と翼廊に九つの礼拝堂を配し,側廊は二重にされるなど,多数の聖遺物を順拝する巡礼者の流れをうまく導くプランをとっている。現在周歩廊に置かれている大理石浮彫は,アーチ下の人物を個別に静的にとらえているが,南玄関の〈キリスト昇天〉では多数の人物が半円形壁面の枠に合わせた姿勢をとりながら全体を構成し,ロマネスク様式へ歩を進めている。一方,量感に満ちた人体表現は,巡礼路沿いに同時代スペインの彫刻に影響を与えた。外見は煉瓦造で砦を思わせるジャコバン教会(13~14世紀)は,高さ22mの7本の円柱列を真ん中に2身廊を備えた意表をつく内部空間の,南方ゴシックの傑作である。オーギュスタン美術館は,柱頭などロマネスク彫刻の収蔵で知られる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥールーズ」の意味・わかりやすい解説

トゥールーズ
とぅーるーず
Toulouse

フランス南西部、オート・ガロンヌ県の県都。パリ、マルセイユリヨンに次ぐフランス第4位の都市。人口39万0350(1999)、47万1941(2015センサス)。アキテーヌ盆地と地中海の中間に位置し、ガロンヌ川が市内を貫流する。地中海とはミディ運河大西洋とはガロンヌ運河で結ばれている。古くから交通の要地として栄え、現在は行政、文化、宗教、商業の中心地で、とくに第三次産業が発達している。商業ではアキテーヌ盆地の農産物の取引地として重要である。工業は、アキテーヌ地方の炭田、ピレネー山脈の水力発電、サン・マルセやラックの天然ガスを利用して、第一次世界大戦後から発達した。金属、繊維、製紙、機械、化学などの工業が発達したが、とりわけ航空機工業の発展が著しい。航空機工業は第二次世界大戦後の工場の地方分散政策によって発達したもので、フランスばかりではなく、西ヨーロッパの航空機工業の中心地でもある。国立航空学校、宇宙工学研究所も置かれている。

 歴史的建築物が多く、トマス・アクィナスの墓があるサン・セルナン教会はフランス最大のロマネスク様式のバシリカで、11~14世紀の建造。ほかにゴシック様式のサンテティエンヌ大聖堂(11~17世紀)、ゴシックのジャコバン教会(13~14世紀)、18世紀ルネサンス建築のカピトール、1229年創立の大学などがある。

[青木伸好]

歴史

紀元前2世紀末、ケルト系テクトサゲス人の首邑(しゅゆう)をローマ人が従属させ、属州都市として、トロサTolosaとよんだ。3世紀にはキリスト教が布教され、初代司教聖セルナンは252年に殉教している。5世紀初めにバンダル人の寇掠(こうりゃく)を受け、ついで西ゴート王国の首府となったが、508年にフランク王クロービス1世により征服された。メロビング時代、カロリング時代を通じてしばしばアキテーヌ地方を統轄する従属公領や分王国の首府となった。封建時代はトゥールーズ伯の支配下に商工業の発展、自治制度の発達がみられたが、アルビジョア十字軍の南仏征服によりカペー朝の勢力が進出し、1271年に王領に合併された。中世末期から16世紀にかけては大学の発展、高等法院の設置がみられ、経済的、文化的にも繁栄したが、17、18世紀には停滞した。革命期の1799年の市民軍による王党派蜂起(ほうき)の撃破、1815年の王党派テロル部隊による市総督殺害、1871年の急進的共和派によるコミューン設立などの事件は歴史上有名。

[江川 温]

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百科事典マイペディア 「トゥールーズ」の意味・わかりやすい解説

トゥールーズ

フランス南西部,オート・ガロンヌ県の県都。ガロンヌ川上流沿岸にあり,運河,鉄道,道路交通の中心地。農畜産物の取引が盛ん。航空機・機械・電子工学・化学・食品工業が行われ,アエロスパシアル・マトラ社の組立て本部工場やエアバス社本社がある。11世紀のサン・セルナン教会,13世紀のサンテティエンヌ教会,大学(1229年創立)がある。起源は古く,5世紀には西ゴート王国の下で栄え,のち,トゥールーズ伯領となったが,1271年フランス王国に併合。35万8598人,都市圏人口65万人以上(1990)。
→関連項目ミディ運河

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「トゥールーズ」の解説

トゥールーズ
Toulouse

フランス南西部の都市。ラングドックの中心地で,419~507年に西ゴートの首都,778~1271年にトゥールーズ伯領の中心となった。数度にわたってアルビジョワ十字軍の攻囲を受け,その後設立された大学は異端に対する防波堤となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トゥールーズ」の意味・わかりやすい解説

トゥールーズ

ツールーズ」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のトゥールーズの言及

【アカデミー】より

…学術団体としてのアカデミーは,古くは前述のカール大帝やアルフレッド大王の事績にさかのぼることもできるが,本格的には中世,とりわけルネサンス期に発展した。中世ヨーロッパを通じてもっとも名高いアカデミーとしては,1323年,南フランスのトゥールーズにトルバドゥールの詩人たちが結成した〈花の競技アカデミーAcadémie des jeux floraux〉が挙げられよう。この団体はオック語で神や聖母をたたえる詩のコンテストを催し,勝者に金のスミレなど花をかたどった賞品を与えて詩歌の振興につとめた。…

※「トゥールーズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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