トインビー(英語表記)Arnold Toynbee

精選版 日本国語大辞典 「トインビー」の意味・読み・例文・類語

トインビー

(Arnold Joseph Toynbee アーノルド=ジョーゼフ━) イギリス歴史家、文明批評家ロンドン大学教授、王立国際問題研究所研究部長を歴任大作「歴史の研究」一二巻によって、歴史は、その基礎になる文明の有機的な消長のあらわれであると説き、独自の文明史観を展開し、新しい歴史学への道を開いた。(一八八九‐一九七五

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デジタル大辞泉 「トインビー」の意味・読み・例文・類語

トインビー(Arnold Joseph Toynbee)

[1889~1975]英国の歴史家・文明批評家。歴史の基礎を文明におき、文明の消長の一般法則を体系づけ、独自の歴史観を展開した。著「歴史の研究」「試練に立つ文明」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「トインビー」の意味・わかりやすい解説

トインビー
Arnold Toynbee
生没年:1852-83

イギリスの経済学者,社会改良家。オックスフォード大学卒業後,母校教鞭をとるかたわら,ロンドンのイーストエンドブラッドフォードなどの工業都市で社会事業を展開。病弱のため早逝したが,のちに編集・出版されたオックスフォードにおけるその経済史講義は,〈産業革命〉の概念を最初に確立したものとして,史学史上の記念碑的価値をもつことになった。彼の〈産業革命〉論は,その社会事業家としての問題意識と一体となって,劇的な変化,つまり革命があったこと,その結果民衆の生活水準が著しく低下したことの2点を柱としており,以後,この2点をめぐってさまざまな論争が展開される。とくに後者については,その主張はJ.H.クラッパムらの〈楽観説〉派から〈トインビー伝説〉と批判されたが,彼の立場への支持もいまだになくなってはいない。なお,イースト・エンドに現存する〈トインビー・ホールToynbee Hall〉は,その没後,1884年に彼を記念してS.A.バーネットが設立した世界最初のセツルメントである。
執筆者:

トインビー
Arnold Joseph Toynbee
生没年:1889-1975

イギリスの歴史家。〈産業革命〉概念の普及者A.トインビーの甥。オックスフォード大学で古典古代史を学び,外交官としてパリ講和会議に列席。ロンドン大学教授(1919-24)をはじめ,王立国際問題研究所研究部長,外務省調査部長を務めた。全人類史を21の文明圏のもとで包括的に把握した主著《歴史の研究》全12巻(1934-61)によって注目を集め,独自の文明評論活動を展開した。ほかに《試練に立つ文明》(1948)などの著書がある。1929,56,67年の3度にわたって来日。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トインビー」の意味・わかりやすい解説

トインビー
Toynbee, Arnold Joseph

[生]1889.4.14. ロンドン
[没]1975.10.22. ヨーク
イギリスの歴史家。オックスフォード大学に学び,ギリシア史を専攻。ロンドン大学教授 (1919~24) を経て王立国際問題研究所主任研究員 (1924~56) ,両世界大戦中は政府要員として活躍,パリ平和会議 (1946) にも派遣された。著書は『新しいヨーロッパ』 The New Europe (1915) をはじめ『試練に立つ文明』 Civilization on Trial (1948) など多数あるが,12巻の大著『歴史の研究』A Study of History (1934~61) が代表作。文明の起源を環境の「挑戦」に対する「応答」の試練とみ,歴史における英雄 (特に宗教家) の役割を重視して「撤退と復帰」の理論を展開。また文明崩壊の原因を「創造性の復讐」とみなすなど従来の史家の政治的,経済的決定論に対して一種の宗教的,予言的史観を提示した。

トインビー
Toynbee, (Theodore) Philip

[生]1916.6.25. オックスフォード
[没]1981.6.15. セントブリアベルズリドニー
イギリスの小説家,詩人。歴史家 A.トインビーの息子。ラグビー校を経てオックスフォード大学卒業。内的独白や神話的手法など,実験的手法の小説で知られる。『野蛮な時代』 The Savage Days (1937) ,『グッドマン夫人とのお茶』 Tea with Mrs. Goodman (47) ,『海に向った庭』 The Garden to the Sea (54) などの小説,自伝的要素を含む韻文物語集「パンタロン・シリーズ」 The Pantaloon Series (61~68) などがある。

トインビー
Toynbee, Arnold

[生]1852.8.23.
[没]1883.3.9.
イギリスの経済史家,社会改良家。オックスフォード大学卒業。同大学ベイリオル・カレッジのチューターとして経済学,経済史を講じ,特に産業革命の研究で新時代を画した。また慈善事業,協同組合,教会改革にも献身,その死後彼を記念して世界最初のセツルメントであるトインビー・ホールがロンドンに造られた。主著『産業革命史』 The Industrial Revolution (1884) 。

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百科事典マイペディア 「トインビー」の意味・わかりやすい解説

トインビー

英国の歴史家。経済史家A.トインビーの甥(おい)。1919年ロンドン大学教授。シュペングラーの史観から大きな影響を受けるとともに,他方彼の文化有機体の決定性と孤立性の主張には反対して,1934年―1961年に《歴史の研究》12巻を著す。膨大な史料を駆使して諸〈文明〉(社会体)の成長法則とそれらの精神史的連関を明らかにすることに努め,それを通じて独自の宗教哲学を展開し,現代の世界史学に大きな問題を投げかけた。ほかに《試練に立つ文明》《一歴史家の宗教観》など。
→関連項目クラッパムトインビー

トインビー

英国の経済学者,社会改良家。オックスフォード大学で産業革命史を講義(没後《18世紀英国産業革命講義》として出版),技術変革の革命的作用を明らかにし,労働者の貧困はこの革命の結果であるとした。また学生時代から貧民教育に奔走,世界最初のセツルメントであるトインビー・ホールが,彼を記念して1884年ロンドンに設立された。歴史家A.J.トインビーは甥。

トインビー

英国の小説家,批評家。歴史家A.J.トインビーの息子。《グッドマン夫人のお茶の会》(1947年),《海に面した庭》(1953年)のほか4部作《パンタルーン(道化師)》(1961年―1966年)などの前衛的小説がある。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「トインビー」の解説

トインビー
Arnold Toynbee

1852~83

イギリスの経済学者,社会改良家。オクスフォード大学での講義をまとめた『イギリス18世紀産業革命講義』(1884年)は「産業革命」という歴史用語を普及させるとともに,それを「激変,窮乏」としてとらえる古典的学説を生んだ。社会改良に尽力した彼を記念してロンドンにトインビー・ホールが建てられた。甥のJ.A.トインビーは20世紀の著名な歴史家。

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世界大百科事典(旧版)内のトインビーの言及

【東方問題】より

…しかし,彼らのいう〈東方問題〉とは実に〈西方問題〉にほかならなかったといってよい。このヨーロッパ中心主義にひたった偏見に満ちた伝統と決別しようとしたのは,A.トインビーである。彼の抱負は,1923年に公刊された著書《ギリシアとトルコにおける西方問題The Western Question in Greece and Turkey》にこめられている。…

【ローマ没落史観】より

…なお,この場合のローマとは通例いわゆる西ローマ帝国を指すが,没落原因論が多様であると同様,没落時期についても西ローマ帝国が消滅した476年という伝統的年代で一致しているわけではない。A.J.トインビーやウォールバンクF.W.Walbankのように,すでに前5世紀ギリシアのポリス世界に古代文明没落の徴をみる説から,7世紀中葉以後のアラブの進出まで古代地中海世界は存続していたと説くH.ピレンヌ説までさまざまである。
[古代]
 ローマ没落観は,すでにローマ興隆期から存在した。…

【産業革命】より


【産業革命論の変遷】
 〈産業革命〉という言葉そのものは,K.マルクスやフランスのA.deトックビルらによっても用いられたが,厳密な学術用語としては,1880年代になってイギリスの社会改良家A.トインビーによって確立させられた。トインビーは,ケンブリッジで教鞭をとるかたわら,ロンドンのイースト・エンドなどのスラム改良に活躍した人物で,今もトインビー・ホールにその名をとどめている。…

※「トインビー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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