トインビー(Arnold Toynbee(1852―83))(読み)といんびー(英語表記)Arnold Toynbee

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

トインビー(Arnold Toynbee(1852―83))
といんびー
Arnold Toynbee
(1852―1883)

イギリスの経済学者、社会改良家。ロンドンに生まれる。オックスフォード大学で経済学と経済史を学び、卒業後同大学で教鞭(きょうべん)をとるかたわら社会改良家として実践的な運動を行い、労働組合、協同組合の普及にも努力した。セツルメント運動の先駆者としても知られ、死後1884年、彼の業績を記念してトインビー・ホールと名づけられた最初のセツルメントがロンドンのホワイト・チャペル地区に建てられた。聴講学生のノートをもとに死後に編集、出版された『18世紀イギリス産業革命講義』Lectures on the Industrial Revolution of the Eighteenth Century in England(1884)は、産業革命という用語を普及させるとともに、その後の産業革命の研究に大きな影響を与えた。彼によれば、生産と分配に関する中世的規制が競争によって代置されたことが産業革命の本質であり、競争の行きすぎが貧困を生み出したのである。したがって、貧困を怠惰によるものという伝統的な考えを排し、自由放任の法的規制の必要があると説いた。

[根本久雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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