デーリー・テレグラフ(読み)でーりーてれぐらふ(英語表記)The Daily Telegraph

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デーリー・テレグラフ」の意味・わかりやすい解説

デーリー・テレグラフ
でーりーてれぐらふ
The Daily Telegraph

タイムズ』『ガーディアン』と並ぶイギリスの高級日刊紙。1855年、印紙税が撤廃される1日前の6月29日に、陸軍中佐アーサー・スレイArthur Sleighが4ページ、2ペンスの価格で創刊した。その後すぐに財政が行き詰まったので、印刷を請け負っていたジョゼフ・モーゼス・レビーJoseph Moses Levy(1812―1888)がこれを手に入れ、編集を息子のエドワード・レビー・ローソンEdward Levy-Lawson(1833―1916。後のバーナム卿(きょう)1st Baron Burnham)に任せ、価格も1ペニーに引き下げた。部数はたちまち増え、1875年には19万部に達するなど、中産階級に人気のある新聞となり、1870年代後半は世界最大部数を誇った。編集傾向は保守的だが、1871年にはアメリカの『ニューヨーク・ヘラルド』と組んで、アフリカ探検中に行方不明になったリビングストンの捜索隊に資金援助をし、これが同紙発展の一因にもなった。しかし、その後を継いだ一族が新聞経営に熱意をもたず、部数は減少し、経営支配権は段階的にウィリアム・ベリーSir William Berry(1879―1954。後のカムローズ卿1st Viscount Camrose)に移行し、1937年に全面掌握される。その途上の1930年、それまで2ペンスに戻されていた価格をふたたびベリーが1ペニーに引き下げると、1週間で部数は倍増した。また1937年には、保守系の『モーニング・ポスト』を併合し、部数増加を後押しした。第二次世界大戦後の1951年に部数100万部を超え、1961年には『サンデー・テレグラフ』を創刊した。ところが、しだいに財政が逼迫(ひっぱく)し、1986年にカナダの新聞経営者コンラッド・ブラックConrad Black(1944― )率いるホリンジャー社の傘下に全面的に組み入れられた。しかし、2004年にブラックが経営上の不正行為で取締役を解任され、これをきっかけに引き起こされた訴訟合戦のなかでホリンジャー社はイギリスの富豪ビジネスマンであるデイヴィッドとフレデリックのバークレーBarclay兄弟(双子)の手に渡った。発行部数は2000年の103万部から2011年には65万部にまで落ち込んだが、依然として高級紙3紙のなかのトップである。

[橋本 直]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デーリー・テレグラフ」の意味・わかりやすい解説

デーリー・テレグラフ
Daily Telegraph

ロンドンで発行されている安価な高級朝刊紙。保守的で堅実な紙面構成が特色。 1855年に A.スレー大佐により『デーリー・テレグラフ・アンド・クリヤー』 Daily Telegraph and Courierの名で創刊された。翌年 J.レビーに譲渡されて名称のクリヤーが削られ,最初の1ペニー新聞として中産階級の人気を得た。 1937年に『モーニング・ポスト』を吸収し,『デーリー・テレグラフ・アンド・モーニング・ポスト』 Daily Telegraph and Morning Postと改題。政治的には中立,保守的で,64年以降週刊誌『デーリー・テレグラフ・マガジン』 Daily Telegraph Magazineも発行している。発行部数は朝刊 104万 316 (1997) 。

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百科事典マイペディア 「デーリー・テレグラフ」の意味・わかりやすい解説

デーリー・テレグラフ

英国の日刊紙。新聞や広告にも課税し,新聞の高価格化の要因となっていた印紙税法が廃止された1855年,《デーリー・テレグラフ》としてロンドンで創刊。新聞標準定価4ペンスの時代に2ペンスで販売し,いわゆる〈ペニー・ペーパー〉時代の先駆となった。1937年,1772年創刊という古い歴史をもつ《モーニング・ポスト》を合併。中立系でニュースは詳細平易だが,論調は保守的。発行部数約105万部(1998)。
→関連項目リデル・ハート

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