デービー(英語表記)Humphry Davy

精選版 日本国語大辞典 「デービー」の意味・読み・例文・類語

デービー

(Sir Humphry Davy サー=ハンフリー━) イギリスの化学者。ファラデーの師。電気分解によりアルカリ金属元素や塩素などのハロゲン元素を発見し、電気化学の基礎を確立。炭鉱用安全灯を発明。王立協会会長。(一七七八‐一八二九

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改訂新版 世界大百科事典 「デービー」の意味・わかりやすい解説

デービー
Humphry Davy
生没年:1778-1829

イギリスの化学者。木彫師長男としてコーンウォールに生まれる。1795年から薬剤師兼外科医のもとで年季奉公をしたのち,98年からベドーズの気体研究所に採用され,そこで気体の化学的・生理学的研究に従事し,亜酸化窒素(笑気)の麻酔性を発見した。彼はこの研究により化学者としての名声を得て,当時ロンドンに新設されたローヤル・インスティチューションの講演助手に任命され,1802-12年同所の化学教授となる。1806年からのボルタの電池を用いての電気化学の実験によりアルカリ金属アルカリ土類金属の単離に成功し,ナポレオン賞の最初の受賞者となった。さらにこの実験等をとおして化学結合の根源が電気的極性に基づくことを明らかにし,物質の構成に関するベルセリウスの二元説への道を開く等,電気化学の基礎を築いた。また10年には塩素の元素性を確認し,この過程での塩素化合物の研究等をとおして,ラボアジエの酸素中心の酸理論を修正して,水素中心の酸理論構築への糸口をつくった。この酸の酸素説の否認,ラボアジエのカロリック理論を否定し,熱を粒子の運動に帰着させたこと,すべての発熱反応が酸化であるという見解の打破等によって,彼はラボアジエによる化学革命をより完全なものとした。なおドルトンの原子説には終始懐疑的であった。彼は化学の実用目的の研究も行った。1802-12年には農業改良会Board of Agricultureに招かれ,農芸化学の講義を行い農業に化学を適用した。この講義内容をまとめて13年《農芸化学原論》として出版した。これはリービヒ以前のこの分野における代表的な著作の一つである。安全灯の考案による鉱山業への貢献,さらに船底の防食の研究等もある。なお地質学にも興味をもち,火山についての論文も書いた。20-27年ローヤル・ソサエティ会長。彼の文化人としての交流は有名で,その資質は詩人コールリジらからも高く評価されている。趣味は釣りと詩作
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デービー」の意味・わかりやすい解説

デービー
Davy, Sir Humphry

[生]1778.12.17. ペンザンス
[没]1829.5.29. ジュネーブ
イギリスの化学者。生地のグラマースクールで学んだのち,化学を独学。ブリストルの医療気体研究所化学監督官 (1798) 。ここで麻酔性ガス,酸化二窒素の研究 (1800) によって認められ,ロンドンの王立研究所教授 (02) ,ロイヤル・ソサエティ会員 (03) ,ダブリン協会名誉会員,ロイヤル・ソサエティ会長 (20~27) 。電気分解法を発展させ,種々のアルカリ金属,アルカリ土類金属の単離に成功,1807年ナポレオン賞を受ける。塩素が単体であることを突止め,その性質や化合物の研究を行なった (10) 。また鉱山ガスの研究とデービー灯の発明により,ロイヤル・ソサエティからランフォード・メダルを授けられた。そのほかにも電気化学を中心とする多くの業績により,ロイヤル・ソサエティのロイヤル・メダルに輝いた。 12年にナイトの称号を授けられ,18年には准男爵に叙せられた。 M.ファラデーは彼の弟子である。また弟ジョン (1790~1868) もホスゲンの発見者として知られる化学者であり,さらに従弟のエドムンド・ウィリアム (1785~1851) も化学者としてアセチレンの発見,白金触媒の研究を行なった。

デービー
Davie, Donald Alfred

[生]1922.7.17. ヨークシャー,バーンズリー
[没]1995.9.18. エクセター
イギリスの詩人,批評家。ケンブリッジ大学卒業後,母校をはじめカリフォルニア,スタンフォードの各大学で教鞭をとった。「ニュー・ラインズ」派の詩人として,『冬の才能』A Winter Talent and Other Poems (1957) など数巻の詩集,『詩語の純化』 Purity of Diction in English Verse (52) ,『明晰な表現力』 Articulate Energy (55) などの評論集がある。

デービー
Davie, William Richardson

[生]1756.6.20. カンバーランド,エグレモント
[没]1820.11.29. サウスカロライナ,ランカスター
アメリカの法律家。子供の頃イギリスから新大陸へ渡り,アメリカ独立革命に軍人として参加。ノースカロライナ州議会議員 (1786~98) ,同州知事 (98~99) を歴任。アメリカで最も古い州立大学の一つであるノースカロライナ大学の創立者として知られる。

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百科事典マイペディア 「デービー」の意味・わかりやすい解説

デービー

英国の化学者。16歳の時医者に奉公し,化学を独学。亜酸化窒素の生理作用を発見し,1802年王立研究所教授。1807年以来電気分解法によりカリウム,ナトリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の単離に成功し,初のナポレオン賞を受賞。次いでハロゲンの研究を行い,塩素の元素性を確認。安全灯(デービー灯)の発明(1817年)でも有名。1820年王立協会長。ファラデーの師。
→関連項目カリウムファラデーローヤル・インスティチューション

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世界大百科事典(旧版)内のデービーの言及

【化学】より

…19世紀に入ってボルタ電池が化学者によって利用されるようになった。水が電気分解されるのをみて,H.デービーは電流によって強く化合している2物質を切り離す可能性に思い至った。ローヤル・インスティチューションにつくられた極板250枚以上の強力な電池の力を借りて,デービーは融解塩からカリウム,ナトリウムなどの単離に成功した(1807)。…

【カルシウム】より

…河川水や海水にもつねに含まれ(海水では400mg/l),また生物体にとっても重要な成分の一つとなっている重要な元素である。カルシウムの単体をはじめて純粋に取り出したのはH.デービーである(1808)。彼は,酸化カルシウムと酸化水銀の混合物を水で湿したものを電解してまずカルシウムのアマルガムを得,これから水銀を蒸留によって取り除くと,銀白色の金属元素が残ることを観察した。…

【触媒】より


[ベルセリウスの命名]
 スウェーデンの化学者J.J.ベルセリウスが1836年,そのような働きをする物質に注目し,ギリシア語のkatalysis(原義はもつれ,結び目などを解く,ゆるめること)から命名した。すでに古くから糖を原料とするアルコール発酵やアルコールの酢酸発酵が行われ,18世紀前半にはリネン漂白のための鉛室式硫酸製造が始まっていたが,さらに酸によるデンプンの糖化が見いだされ(1781),イギリスのH.デービーにより加熱白金線による発火点以下での水素,一酸化炭素,エチレン,アルコール,エーテルなどの燃焼に関する公開実験がロンドンのローヤル・インスティチューションで行われ(1817),また塩素酸カリウムからの酸素発生反応における二酸化マンガンの促進効果,エチルアルコールからエーテルを得る脱水反応における硫酸添加効果など,注目に値するこの種の現象が多く見いだされるようになった。当時化学界の大御所であったベルセリウスは,通常の化学親和力によらないそれらの現象に興味を抱き,化学反応をひき起こす新しい概念として,この考えを提起したのであった。…

【ストロンチウム】より

…スコットランドのストロンチアンに産する鉱物ストロンチアン石(炭酸ストロンチウムSrCO3を主成分とする)から,1790年にイギリスのクローフォードAdair Crawford(1748‐95)によって発見されたのでこの名がある。融触塩の電気分解によって,金属単体としてはじめて取り出したのはH.デービー(1808)である。天然に存在する量はカルシウムよりはるかに少ない。…

【麻酔】より

…麻酔法が急速に発展したのは19世紀に入ってからであった。1799年デービーHumphry Davy(1778‐1829)は笑気(一酸化二窒素N2O)吸入の麻酔作用を発見,ロングCrawford Williamson Long(1815‐78)は1842年エーテル麻酔で頸部腫瘍摘出術を行った。歯科医W.T.G.モートンは46年10月16日マサチューセッツ総合病院臨床講堂でエーテル麻酔を供覧した。…

※「デービー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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