デービス(Raymond Davis Jr.)(読み)でーびす(英語表記)Raymond Davis Jr.

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

デービス(Raymond Davis Jr.)
でーびす
Raymond Davis Jr.
(1914―2006)

アメリカの実験物理学者。ワシントンDC生まれ。1937年にメリーランド大学を卒業し、1940年に修士。エール大学で物理化学を学び、1942年に博士号を取得した。1942年から1946年まで空軍に所属し、2年間のモンサント化学社勤務を経て1948年にブルックヘブン国立研究所の化学部門スタッフとなる。1950年代初めからニュートリノ観測を開始し、太陽から飛来するニュートリノ観測の可能性を1955年の論文で指摘した。

 1967年には、サウス・ダコタ州にあるホームステーク鉱山の地下に約600トンの四塩化エチレンを入れたタンクを設置し、太陽からのニュートリノをとらえる準備を整えた。装置は太陽からのニュートリノを初めてとらえ、1970年から1994年までほとんど継続して稼動。太陽が熱く輝く原因は核融合反応であることを実証した。また同時に、太陽についての理論から予想されるニュートリノの飛来数に比べ、観測されるニュートリノがかなり少ないという「太陽ニュートリノ問題」を提起した。その後の日本の研究者などによる観測で、それまで質量がないと思われていたニュートリノに実は質量があることが、その食い違いの原因であることがわかってきた。ブルックヘブン国立研究所を1984年に退職し、1985年からペンシルベニア大学教授。1971年から1973年まで、アメリカ航空宇宙局NASA)の月サンプル検討委員会のメンバーとして、アポロ11号が月から持ち帰った砂や岩の分析にも携わった。別の手法宇宙からのニュートリノをとらえた東京大学名誉教授の小柴昌俊(こしばまさとし)、宇宙におけるX線源を発見したR・ジャコーニとともに、新たな天体観測手法を開拓した業績で2002年のノーベル物理学賞を受賞した。

[馬場錬成]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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