デュー・プロセス・オブ・ロー(英語表記)due process of law

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

デュー・プロセス・オブ・ロー
due process of law

法によって定められた適正手続のこと。アメリカ合衆国憲法は「法の適正手続によらなければ,生命,自由または財産を奪われることはない」 (修正5条) と規定している。これはマグナ・カルタ 39条中の「自由人は,同輩によって構成される合法的な法廷および国法によるのでなければ,逮捕監禁差押え,法外放置,もしくは追放を受けまたはその他の方法によって侵害されることはない」の規定にその淵源をもつといわれている。この修正5条は個人の憲法上の権利を侵害する州の行為には適用できなかったので,1868年にさらに修正 14条が追加され,州の行為にも適正手続の拘束が及ぼされることになった。デュー・プロセス・オブ・ローは,アメリカでも当初は文字どおり手続的制限規定と解されていたが,19世紀末頃より実体的適正の意味にも解されるようになり,連邦最高裁判所は,そのなかに契約の自由などを読込んで,社会経済立法の多くを違憲と判示した。しかし 1937年を契機に最高裁判所は判例を変更し,ニュー・ディール諸法を合憲とするにいたり (→私有財産制 ) ,以後学説,判例において実体的デュー・プロセスの考え方には消極的ないし警戒的態度が一般的となった。もっとも,1960年代なかばから,とりわけ 70年代以降実体的デュー・プロセス論の復活の兆しが見受けられる。日本では,日本国憲法は「何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ,又はその他の刑罰を科せられない」 (31条) と規定している。この規定については,今日では「手続」は純然たる手続のみならず実体要件までも含み,「法律の定める」とはただ形式的に「法定」の意味ではなく,内容的にも適正なものでなければならないことを意味しているという理解が確立している。

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