日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
デノミネーション(宗教組織)
でのみねーしょん
denomination
宗教組織の一形態を示す学術的用語。通文化的あるいは常識的には、その組織や教学の特徴・形態を問わず、成熟しかつ安定した宗教集団(教団や会派)を、広くデノミネーションとよんでいる。狭義的には、すなわち宗教社会学や教会史においては、より厳しく、当の社会に国教会や公認教会のあるなしにかかわらず、実質的に信仰の自由と政教分離が守られている先進諸社会において、組織上、教学上、独立した特質を維持し、平等に伝道や布教において競合する、多様な宗教集団個々を示す用語である。
学問的語源としては、ニーバーH. R. Niebuhrのキリスト教会の分類があげられるが、大小を問わずその特徴を維持して信徒獲得に競合するアメリカ型の教会を、彼はデノミネーションとよんだ。国教会や公認教会のような特権的教会(チャーチ)と、反抗的な非主流の教会や分派(セクト)が対抗していた近世ヨーロッパに比較すると、当初から各国の移民が持ち込んだ多様な宗派が平等に並立したアメリカでは、早くから信仰の自由、政教分離が憲法において認められており、それぞれにヨーロッパにあった当時のチャーチ的、セクト的な性格を教義や礼拝様式のなかに残しつつも、互いに寛容な成熟した教会として民主的に共存した各教派を彼はデノミネーションと定義したのである。組織論上は、市民が自発的に参加または離脱できる目的的集団ということになっている。
[井門富二夫]
『S・E・ミード著、野村文子訳『アメリカの宗教』(1978・日本基督教団出版局)』▽『ニーバー著、柴田央子訳『アメリカ型キリスト教の社会的起源』(1984・ヨルダン社)』