デスノス(読み)ですのす(英語表記)Robert Desnos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デスノス」の意味・わかりやすい解説

デスノス
ですのす
Robert Desnos
(1900―1945)

フランスの詩人シュルレアリスム運動に参加、ブルトンの主宰する集団催眠の実験では特異な霊媒的資質を発揮し、『ローズ・セラビィ』(1922)、『喪のための喪』(1924)などの詩集で自動記述的なことば遊びの才能をみせた。やがて民衆言語や古典的詩法にひかれ、シュルレアリスムを離れ叙情ユーモアをたたえた幻想的詩風を確立するとともに、ラジオや映画などの新分野でも活躍。ほかに性の絶対的自由を唱えた散文『自由か愛か』(1927)、詩集『肉体と財』Corps et Bien(1930)、『財産』Fortunes(1942)などがある。第二次世界大戦中は対独抵抗運動に加わり、抵抗詩を秘密出版したが、ゲシュタポに逮捕されてチェコスロバキア収容所で病死した。

[田中淳一]

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改訂新版 世界大百科事典 「デスノス」の意味・わかりやすい解説

デスノス
Robert Desnos
生没年:1900-45

フランスの詩人。パリ生れ。1920年にペレを通じてブルトンらと知りあう。シュルレアリスムの前提をなす催眠実験の過程で,眠ったまま不可思議な詩を書くなど,常ならぬ霊媒的能力を発揮し,グループ内の重要人となる。24年の運動発足後もシュルレアリストとして活動,《自由か愛か!》(1927)のような特異な詩的散文を発表する。28年に除名されてからはジャーナリストとなるが,夢に対する強い関心は生涯変わらなかった。第2次大戦中は抵抗運動に参加,ゲシュタポに捕らえられ,テレジエンシュタット(チェコスロバキア)の収容所で死んだ。詩作品も数多いが,死後に出た《共有地》(1953)などに代表作が収められている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デスノス」の意味・わかりやすい解説

デスノス
Desnos, Robert

[生]1900.7.4. パリ
[没]1945.6.8. チェコスロバキア,テレジン
フランスの詩人。催眠状態での夢の口述に特殊な才能を示して,初期シュルレアリスム運動の方向づけに大きな役割を果した。 1930年その運動から離れ,より柔軟なスタイルで驚異感傷に満ちた世界を創造した。第2次世界大戦中に対独レジスタンスに加わって逮捕され,収容所で死亡。代表的詩集『喪には喪を』 Deuil pour deuil (1924) ,『肉体と幸福』 Corps et biens (30) ,『覚醒状態』 État de veille (43) など。

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世界大百科事典(旧版)内のデスノスの言及

【シュルレアリスム】より

…この実験の結果,思考の純粋かつ原初的な姿に触れうると信じた彼らは,アラゴン,エリュアールらとともに,その確信にもとづく新しい思想と運動の可能性を探りはじめた。20年からはツァラ,ピカビアらのパリ・ダダの運動に参加するが,他方,ペレ,デスノス,クルベル,エルンストらの詩人,画家を加えて,夢や催眠術,霊媒現象などの実地研究を行い,それらを通じて,理性の統御を受けないオートマティックな思考の存在を確認,これをかりに〈シュルレアリスム〉と名づける。ダダと決別したのち,24年に《シュルレアリスム宣言》(ブルトン起草)を発表し,それまでの活動を理論的に総括しつつ,思考の解放,想像力の復権,夢・狂気・不可思議の再検討等の主張を唱えるとともに,機関誌《シュルレアリスム革命Révolution surréaliste》を創刊,さらに〈シュルレアリスム研究センター〉を開設(1925)して,正式に集団的運動を発足させた。…

【ファントマ】より

…ピエール・スーベストルPierre Souvestreとマルセル・アランMarcel Allainの新聞連載小説に基づくルイ・フイヤード監督作品。《ファントマ第1編・ベルタム事件》《ファントマ第2編・黒衣の人》《ファントマ第3編・不思議な指紋》《ファントマ第4編・仮面舞踏会の悲劇》《ファントマ第5編・偽りの長官》の5編からなり,さらに第1編が3話30場,第2編が4話46場からなるという形式のシリーズで,〈もっともおどろくべき冒険,もっとも予期できない突発事件,もっともおそろしい犯罪,もっとも複雑な葛藤(かつとう),そして自由と詩の大きな息吹き〉が当時のフランスのシュルレアリストを熱狂させ,詩人ロベール・デスノスは次のようなファントマ賛の詩を書いた。〈巨大なその影はのびる/世界の上にそしてパリの上に/沈黙のなかから浮かびでる/灰色の目のこの亡霊はなにものか?/ファントマよ それはお前か?/屋根のうえに立ちあがるのは?〉(飯島正訳)。…

※「デスノス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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