デカボラン

化学辞典 第2版 「デカボラン」の解説

デカボラン
デカボラン
decaborane

nido-デカボラン(14)が代表であるが,そのほかにC5H8が2個つながったconjuncto-デカボラン(16)が3種類,さらに構造不明の不安定なB10H18が知られている.【】デカボラン(14):B10H14(122.22).nido-デカボラン(14).従来は,B2H6の熱分解で得られたが,B5H9からつくる方法や,NaBH4からNaB11H14を経てつくる方法などが開発されている.無色の揮発性固体.11頂点の三角多面体から1頂点を除いたnido-型である.密度約0.94 g cm-3融点約99.6 ℃,沸点213 ℃.固体のボラン中で分子量最小のもの.密閉器中では150 ℃ でも安定で,300 ℃ でゆっくり分解してBと H2 になる.室温では空気中でも安定である.冷水に微溶で,熱水では加水分解する.有機溶媒(ベンゼン,アルコール類,酢酸エチルなど)やCS2などに可溶.ただし,反応性が大きく,アセトンアセトニトリルなどとは室温でも反応する.また,CCl4との混合物は衝撃で爆発する.ロケット推進薬,ジェット燃料添加剤,オレフィン重合の触媒,より大きなボランメタラボランカルバボランなどの合成の前駆物質として用いられる.[CAS 17702-41-9]【】デカボラン(16):B10H16(124.14).conjuncto-1,1′-デカボラン(16)(下図)のほかに,結合位置が異なる1,2′-と2,2′-デカボラン(16)の2種類の異性体がある.B5H9から,高エネルギー反応でつくる.たとえば,1,1′-デカボラン(16)は,B5H9水素気流中で,放電または中性子照射すると得られる.conjuncto-1,1′-デカボラン(16)では,図のように2個のB5H8が,両者の四角すい型骨格の頂点のBどうしが結合している.B-B1.74 Å(双方の頂点間の架橋),1.76 Å(同じB5H8の頂点と底面のB間),1.71 Å(同底面の隣接B間).1,1′-デカボラン(16)は無色の固体で,室温では密閉器中はもちろん空気中でも安定である.CS2などの無極性溶媒に可溶.HBr,HIと反応して,B5H9とB5H8X(X = Br,I)になる.I2,エチレンなどと反応してB10H14となる.片方のB5H8の頂点と他方の底面のBどうしが結合している.1,2′-デカボラン(16)は,融点18.4 ℃.二つのB5H8の底面のBどうしが結合している.2,2′-デカボラン(16)は,融点-23~-21 ℃.[CAS 71595-75-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デカボラン」の意味・わかりやすい解説

デカボラン
decaborane

水素とホウ素より成るボランの1つ。化学式 B10H14 。無色固体。ロケットの燃料として使われる。融点 100℃。ジボランなどを熱してつくり,昇華により精製する。酸素中では定温で安定であるが,空気のないところでは 200℃で分解する。

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