ディー(英語表記)John Dee

精選版 日本国語大辞典 「ディー」の意味・読み・例文・類語

ディー

〘名〙 (D, d)⸨デー⸩
① 英語のアルファベットの第四字。
② (D) ローマ数字の五〇〇。
③ (d) 単位のデシ略号
④ (D) 音楽で、ニ音・ニ調の英語名。
重水素を表わす元素記号
有機化合物の、光学的右旋性を表わす略記号。
⑦ 有機化合物の、立体構造の系統を表わす略記号。
⑧ (d) 数学で、a,b,c に次ぐ第四の既知数を表わす記号。
⑨ (D) 蒸気機関車の記号で、動輪軸が四軸の貨物用機関車を示す。
汽車罐焚き(1937)〈中野重治〉五「機関車がCとかDとかなったでしょう? 電気機関車の方はEDとか」
⑩ (D) 鉄道車両の分類で、ディーゼルカー、ディーゼル機関車を表わす記号。

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デジタル大辞泉 「ディー」の意味・読み・例文・類語

ディー(D/d)

英語のアルファベットの第4字。
〈D〉ローマ数字の500。
〈D〉音楽で、音名の一。ニ音。
〈D〉《〈ラテンdeuterium重水素を表す記号。
〈D〉《doctordoctor course博士博士課程を表す記号。D1(博士課程の1年生)、D2(博士課程の2年生)のように用いる。
〈D〉《directorディレクター
《〈フランス〉denier》繊維の太さの単位、デニールの記号。
〈d〉《〈フランス〉déci-》数の単位、デシの記号。

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改訂新版 世界大百科事典 「ディー」の意味・わかりやすい解説

ディー
John Dee
生没年:1527-1608

イギリス,エリザベス朝時代の思想家,数学者,占星術師。イギリスにユークリッド幾何学ウィトルウィウスの建築学を導入し,旧来の魔術を科学の域に高めようとしたが,一般には黒魔術師との誤解を受けた。シェークスピアの戯曲《テンペスト》の主人公プロスペローは,彼をモデルにしたものと考えられている。ケンブリッジのセント・ジョンズ・カレッジに学び,若くしてオランダやフランスに遊学,ギリシア語にたんのうなことからギリシアの数学と哲学の研究に専心したが,同時にフィチーノやピコ・デラ・ミランドラらのイタリア神秘哲学に傾倒,イギリスにおける最初で最大のヘルメス主義者となった。生涯の多くを大陸で過ごし,博物学者ゲスナーや海図製作家メルカトルらと交友を結んだ。イギリスではメアリー女王ならびにエリザベス1世の政治顧問ともなり,両女王の戴冠式の日付けを占星術により決定するなど特異な役割を果たした。

 しかし海上交易商人を父に持ったディーは,同時に実際的な国益を図る技術者としての側面をもち,対東洋貿易を有利にすすめる北極回りの航路を開拓する試みに力を注いだり,ニシン漁船団を組織したりした。さらに彼は古文書の保存管理を中心とする近代的な図書館システムの最初の提唱者であり,1556年にはメアリー女王に対し,内乱のため破壊されつつある写本類の収集保全を請願した。この請願は実現しなかったが,ディー自身は独力で4000冊に及ぶ書物を集め,当時ヨーロッパで最大といわれたグロリエJean Grolierの蔵書数約3000を上回る前代未聞の私設資料館を築きあげ,のちアシュモリアン博物館の収集品に加えられた。収書中にはR.ベーコンの写本類が多く,ディーを通じてF.ベーコンは自分と同姓の哲学者の思想に接したともいわれる。諸学渉猟の果てに晩年は降霊術に凝り,降霊術師ケリーEdward Kelly(1555ころ-?)を通して天使と対話し霊的知識を獲得したといわれる。ヘルメス思想を開示した主著《聖文字のモナド》(1564),《ユークリッド“ストイケイア”序文》(1570)は,フラッド,アシュモール,アンドレーエら薔薇十字団の中心人物たちに多大な影響を与えた。
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百科事典マイペディア 「ディー」の意味・わかりやすい解説

ディー

英国の万能学者,廷臣。ユークリッドウィトルウィウスを英国に導入した数学者,建築家,当代随一の蔵書家,北極航路の先駆的開拓者,さらには練達の魔術・占星術の実践者など,万学に通じた〈賢者〉として知られた。シェークスピア《テンペスト》の主人公プロスペローのモデルに擬せられるゆえんである。P.シドニーのサークルや薔薇十字団との関係,ルドルフ2世との連繋とおぼしいボヘミアでの隠密行動の真相,その〈天使魔術〉など,本格研究が待たれている。主著に《聖刻文字の単子》《霊告日記》などがあり,P.フレンチによる評伝(1972年)がある。

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世界大百科事典(旧版)内のディーの言及

【卵】より

…これらの神話は非生物的な卵から生物が生まれる創造の奇跡に由来すると考えられ,混沌から秩序への移行を象徴する。こうした〈宇宙卵〉の寓意はルネサンスのヘルメス思想家にも影響し,J.ディーやR.フラッドは卵に擬した神秘的な宇宙構造モデルを発想している。 また卵は生命とその再生を表す標章としても広く用いられた。…

【錬金術】より

…例えばルネサンス期の文芸に決定的影響を与えたG.リプリーの錬金術文献《錬金術の複合》(1591)や《十二の門》(1766)などは難解な寓意詩になっている。とくに薔薇十字団の啓蒙運動の中心地となった17世紀のイギリスには,リプリーの詩やJ.ディーの哲学書に影響された文芸が急激に出現している。シェークスピアの《リア王》は艱難辛苦が人間を完成に近づけることを錬金術のメタファーに従って物語り,《あらし(テンペスト)》はディーの魔術師としての側面を戯曲化したものといわれる。…

※「ディー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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