ディーゼル(読み)でぃーぜる(英語表記)Rudolf Diesel

精選版 日本国語大辞典 「ディーゼル」の意味・読み・例文・類語

ディーゼル

[1] (Rudolf Diesel ルドルフ━) ドイツの機械技術者。内燃機関の研究を行ない、一八九七年、重油燃料とするディーゼル機関を発明した。(一八五八‐一九一三
※ガトフ・フセグダア(1928)〈岩藤雪夫〉三「タアビンは蒸汽の消費量が最も経済的であるし燃料に対しても効率がいい。デーゼルも力のパーセンテーヂが大きい」

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デジタル大辞泉 「ディーゼル」の意味・読み・例文・類語

ディーゼル(diesel)

《「ジーゼル」とも》「ディーゼルエンジン」「ディーゼルカー」「ディーゼル機関」の略。

ディーゼル(Rudolf Diesel)

[1858~1913]ドイツの機械技師。実用的なディーゼル機関発明者で、1893年に考案、1897年に製作・実験。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディーゼル」の意味・わかりやすい解説

ディーゼル
でぃーぜる
Rudolf Diesel
(1858―1913)

ディーゼルエンジンを発明したドイツの機械技術者。ドイツ人の両親の間にパリで生まれる。1870年、プロイセン・フランス戦争の難を逃れて一家ロンドンに移った。8週間ここで過ごしたのち、ルドルフはひとりでアウクスブルクへ行きそこの州立中学校でドイツ流の勉強をした。1873年10月、アウクスブルクの工業学校に進み機械技師になる勉強を始めた。この学校できわめて優秀な生徒であると認められ、18歳になったときミュンヘン技術学校へ進む奨学金をとった。学校時代に物理の実験で使用した空気力学応用の火付け器は強く印象に残った。ガラス製の自転車用ポンプのようなこの火付け器は、プランジャーをシリンダーの中に押し込むと、下方にある木が燃え始めるというもので、空気が圧縮されるとその温度が上昇することを示す器具であった。のちにエンジンを設計したとき、この火付け器を思い出したといえないこともない。1876年ミュンヘン技術学校に入り、C・von・リンデに強い影響を受けた。リンデは、もっとも能率のよいエンジンでも燃料の熱エネルギーの10%以上を利用することはできないと話した。ディーゼルは、これは検討を要することであるとノートに記した。学校を終えたあとスイスのザルツァー工場に就職した。ここではリンデの設計した製氷機を製造していた。

 1884年の暮れミュンヘンで結婚し、その後パリで生活した。製氷機では冷却のためにアンモニアガスの圧縮が行われていたが、蒸気エンジンの蒸気のかわりにアンモニアガスを使うことを考えた。しかしこのころベンツとダイムラーガソリンエンジンの使用が広まり、ディーゼルも空気と液体燃料を使用した高圧縮熱エンジンを考えるようになった。1890年ベルリンに移り、1893年には「合理的熱モーターの理論と建設」という論文を発表した。その後、非常に高い圧力を加えると内燃機関の内部の温度が上昇することを利用し、燃料に点火させる考えに到達した。新しい考えに基づくエンジンの製作、実験は1893年ころより始まった。燃料も最初はケロシンが使われたが、のちには軽油を使った。1897年の1月に行った実験では熱効率26.2%、燃料消費は毎時1馬力当り0.53ポンド(240グラム)、毎分172回転で20馬力の出力が得られた。同1897年2月、ミュンヘン大学のシュレーターMoritz Schröter(1851―1925)による公式な性能試験の結果、このエンジンは世界でもっとも経済的な新型エンジンであることが示された。このときのエンジンは現在ドイツ博物館(ミュンヘン)に保存されている。圧縮‐点火タイプのエンジンに「ディーゼル」の名前をつけたのは妻マルタMartha Diesel(1860―1944)の示唆によるといわれている。1898年ミュンヘンでの博覧会に四つのディーゼルエンジンが展示された。

 その後、ディーゼルエンジンは機関車用、船舶用として広く使用され、さらに多くの研究者によって軽量化が進められた結果、自動車などにも用いられるようになった。1913年9月、ディーゼルエンジン製造工場の定礎式に招待されて、アントウェルペン(アントワープ)からイギリスに向かうべく乗船した汽船ドレスデン号上から海中に身を投げ、謎(なぞ)の死を遂げた。

[中山秀太郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「ディーゼル」の意味・わかりやすい解説

ディーゼル
Rudolf Diesel
生没年:1858-1913

ドイツの機械技術者,ディーゼルエンジンの発明者。パリに生まれるが,普仏戦争のため両親ともどもイギリスに移住,その後叔父を頼ってドイツに渡り,アウクスブルクの工業学校,次いでミュンヘン工科大学で学ぶ。C.vonリンデの機械学,熱機関の講義にひかれ,熱効率の高い機関の実現に関心をもった。1880年大学を卒業,パリのリンデ製氷機工場で冷凍機の製作や高圧機械,熱機関の研究にたずさわり,蒸気の代わりにアンモニアを使う機関の発想(1899年のパリ万博で呈示)を経て,92年にディーゼルエンジンの最初の特許を得た。翌年《蒸気機関や従来の内燃機関に代わる合理的な熱機関の理論及び構造》を著し,ディーゼルエンジンの理論的考察を発表,同年2回目の特許を得た。以後,クルップ商会とアウクスブルク機械製作所と共同で実験と開発が始められ,94年,初めて安定したディーゼルエンジンの運転に成功した。96年には商業用機関として工場用動力に用いられるようになり,潜水艦の機関にも利用(1900)された。さらに1912年には最初の大型舶用機関として,セランテイア号(7400トン)に1250馬力のディーゼルエンジン2台が搭載され,ディーゼル船時代が開かれた。このような背景の下ディーゼルの名声は高まったが,13年イギリスへ渡る途中の船から姿を消し,イギリス海峡に投身自殺したものとされている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ディーゼル」の意味・わかりやすい解説

ディーゼル
Diesel, Rudolf (Christian Karl)

[生]1858.3.18. パリ
[没]1913.9.29. イギリス海峡
ドイツの技術者。ディーゼル機関の発明家として知られるが,美術鑑定家,言語研究,社会改革の理論家としても著名であった。皮革職人の子として生れ,幼年期をパリで過したが,普仏戦争のためにパリを追われ,教師をしていた父のいとこの世話で,アウクスブルクの王立職業専門学校を経てミュンヘン工科大学を卒業。パリの冷凍機製造会社に勤務。 1885年頃から内燃機関の研究と実験を行い,93年いわゆるディーゼル機関の原理を発明,97年その実用化に成功し,世界各国で各種の動力機関として広く用いられた。 1913年イギリス海軍省の招きでロンドンに向う途中,イギリス海峡で船から落ちて死亡した。著書に『合理的熱機関の理論と構造』 (1893) がある。

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百科事典マイペディア 「ディーゼル」の意味・わかりやすい解説

ディーゼル

ドイツの機械技術者。ミュンヘン工科大学卒業後,パリのリンデ製氷機工場で働く間,内燃機関を研究,1893年《蒸気機関や従来の内燃機関に代わる合理的な熱機関の理論および構造》でディーゼルエンジンの原理を発表。1894年最初の信頼し得るディーゼルエンジンを製作した。1913年英国へ渡る船中で行方不明となる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ディーゼル」の解説

ディーゼル
Rudolf Diesel

1858~1913

ドイツの機械技術者。アウクスブルクミュンヒェンの工科大学に学び,内燃機関の根本的改良を志して,1897年ついにディーゼル機関を発明した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ディーゼル」の解説

ディーゼル
Rudolf Diesel

1858〜1913
ドイツの技術家
1897年ディーゼル機関を発明。この機関は安価な重油・軽油を用い,燃料消費率が少なく,馬力が最高のために広く実用化された。

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世界大百科事典(旧版)内のディーゼルの言及

【内燃機関】より

…このほか,容積形内燃機関で円滑な円運動を実現する試みは数多くあるが,現在実用になっているのはF.ワンケルにより発明された火花点火式のロータリーエンジンのみである。 一方,R.ディーゼルはN.L.S.カルノーの理想サイクルの実現を目ざし,92年圧縮点火機関,すなわち今日のディーゼルエンジンに関する特許をとり,97年に単筒4サイクル水冷エンジンを実現した。燃焼室における燃料の霧化は当時の工作技術では圧縮空気に頼らねばならず,空気圧縮ポンプなどで重くなり,ディーゼルエンジンは定置機関や船用機関として発達した。…

※「ディーゼル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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