テンチン(天津)直轄市(読み)テンチン(英語表記)Tianjin

翻訳|Tianjin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テンチン(天津)直轄市」の意味・わかりやすい解説

テンチン(天津)〔直轄市〕
テンチン
Tianjin

中国華北地方,ホワペイ (華北) 平原の北東部にある直轄市。北西ペキン (北京) 直轄市に接し,南東ポーハイ (渤海) 湾にのぞむ。 13区と5県に分れる。南をホワン (黄) 河の沖積地,北をイエンシャン (燕山) 山脈にはさまれた低湿地にあり,ハイ (海) 河が東流する。気候は海洋の影響は小さく,平均気温は-4℃ (1月) ~26℃ (7月) 。年降水量は 550mmで夏季に集中する。中心市街地はハイ河の河口から 45km上流のテンチン港を中心とし,ペイ (北) 運河,ツーヤー (子牙) 河,ナン (南) 運河の合流点西岸にある。元代には海岸が近くに迫っていて,直沽,海浜鎮などと呼ばれ,明代に天津衛となって城壁に囲まれた。いずれもポー (渤) 海回りあるいは運河経由でペキンに達する税糧運送の要地であった。またハイ河の5支流を通じる商業でも栄えた。アヘン戦争以後はペキン防衛の要地でもあり,ハイ河の河口にあるタークー (大沽) に砲台が築かれた。 1860年イギリス=フランス連合軍に占領され,北京条約によって開港場となった。各国の租界が設けられ,国際的な商業都市となるとともに,紡績などの軽工業が外国資本によって導入された。人民共和国成立後は旧城内や租界は商業・住宅地域となり,西郊はナンカイ (南開) 大学などの文教地域,南郊は公園地域となっている。またハイ河東岸は工業地域となり,ディーゼルエンジン,ボイラ,トラクタ,土木機械,電機などの重機械工業が発達している。海岸はチャンルー (長蘆) 塩田と呼ばれる中国最大の海塩産地で,近代的なソーダ工場があり化学工業も発達している。南東端にはターカン (大港) 油田がある。ハイ河は浚渫されて,3000t級の船がテンチン港に入港できるが,河口の外側に近代的な新港が建設され,ペキンの外港として重要な役割を果す。低湿地にあり,ハイ河がしばしば氾濫したために土壌のアルカリ化が激しかったが,上・中流で水土の保全に努めるとともに,下流ではチャオパイ (潮白) 新河,トーリウ (独流) 放水路などを開削,改修して,排水と灌漑の便をはかっている。水稲コムギワタ,ナンキンマメ,近郊野菜などが栽培されるが,特に水稲は華北の主産地の一つで,優良種のシヤオチャン (小站) 米として知られる。タークーを中心に漁業も盛んである。ペキン市から出るチンフー (京滬) 鉄道とチンハー (京哈) 鉄道の分岐点で,国内空港もある。面積1万 1300km2,人口 875万 5402 (1990) 。うち市区面積 190km2,市区人口 585万 5068 (1990) 。

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