テルル酸(読み)テルルさん(英語表記)telluric acid

改訂新版 世界大百科事典 「テルル酸」の意味・わかりやすい解説

テルル酸 (テルルさん)
telluric acid

通常はオルトテルル酸orthotelluric acid H6TeO6のことをいう。ほかにメタテルル酸H2TeO4の塩が知られているが単離されていない。

テルルまたは二酸化テルルを,硝酸塩酸および少量の塩素酸の混合物,あるいは硝酸と過マンガン酸カリウムで酸化する。30%過酸化水素水,または少量の酸化クロム(Ⅵ)CrO3を含む沸騰硝酸で酸化しても得られる。注意深く蒸発すると無色結晶として得られる。希薄溶液から結晶化すると単斜晶系β型(比重3.07)を生ずる。濃硝酸溶液より生ずる立方晶系のα型結晶(比重3.17)では,Te原子を中心とし各頂点にOHが配位した正八面体構造をとる。弱い酸であり第一段の解離定数K1=6×10⁻7である。水溶液を中和するとH2TeO4から(HTeO444⁻までの縮合物を与える。空気中で100~200℃に熱すると不溶性のポリメタテルル酸(H2TeO4nとなり,さらに熱すると三酸化テルルTeO3に,400℃以上で二酸化テルルTeO2と酸素に分解する。

 テルル酸は酸化剤であり,亜硫酸をゆっくりと硫酸に酸化し,塩酸,臭化水素酸,およびヨウ化水素酸を酸化してハロゲンを遊離させる。テルル酸塩としてはリチウム塩のLi2H4TeO6・3H2O,Li4H2TeO6,Li3H3TeO6・2H2Oが知られているが,ナトリウム塩の場合,四ナトリウム塩は存在しない。またHg3TeO6,Zn3TeO6が知られている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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