テルビウム

精選版 日本国語大辞典 「テルビウム」の意味・読み・例文・類語

テルビウム

〘名〙 (terbium スウェーデンの地名イッテルビー(Ytterby)にちなむ) 希土類元素ランタノイド一つ元素記号 Tb 原子番号六五。原子量一五八・九二五三四。灰青色、六方晶系結晶。一八四三年、スウェーデンのC=G=モサンデルが、イットリアが三種の元素から成ることを明らかにし、イットリア、エルビウムと並んで命名。希土類鉱物のガドリン石・セル石などにわずかに含まれる。〔稿本化学語彙(1900)〕

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デジタル大辞泉 「テルビウム」の意味・読み・例文・類語

テルビウム(terbium)

希土類元素ランタノイドの一。単体は灰青色の金属元素記号Tb 原子番号65。原子量158.9。

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化学辞典 第2版 「テルビウム」の解説

テルビウム
テルビウム
terbium

Tb.原子番号65の元素.電子配置[Xe]4f 96s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素イットリウム族の一つ.安定核種は質量数159のみの単核種元素.質量数135~171の放射性同位体が知られている.1843年,C.G. Mosanderによりイットリア中から分離された.元素名は鉱物yttriaの見いだされた村名ytterbyからであるが,かれはこの名前を三分割してyttria中に発見した三元素の名称をyttrium,terbium,erbiumとした.確認に手間どり1878年に最終的に確定した名称テルビウムはかれが当初エルビウムとよんだ元素に与えられた.
希土類元素中とくに存在量が少ない.ガドリン石,セル石に含まれる.地殻中の存在度0.6 ppm は希土類元素中で非常に低い部類に属する.希土類元素全般の主要産出国は中国で約98%(2006年)を占めており,テルビウムなどの中重希土類は華南地域に集中している.いちじるしく寡占度の高い重要資源である.銀灰色の金属.六方最密構造(α変態),-53 ℃ 以上で斜方晶系,1317 ℃ 以上で体心立方格子構造.融点1356 ℃,沸点3123 ℃.密度8.229 g cm-3(20 ℃).第一イオン化エネルギー5.864 eV.水に徐々に溶解熱水,酸には溶解して水素を発生する.酸化数3,4.化合物の色は無色.強い常磁性を示す.電子配置は Tb3+ は4f 8,Tb4+f軌道が半分満たされた4f 7で,[Xe]配置の Ce4+ ほどに安定ではない.Tb化合物が主で,Tb化合物はあまり知られていない.Tb F4はTb F3と F2 を300 ℃ 以上で反応させると得られる無色の固体.Tb O2はTb2O3を450 ℃ で原子状酸素と反応させると得られる.Tb4O7は七酸化二テルビウム(Ⅳ)二テルビウム(Ⅲ)とされている.
Tbはブラウン管他用緑色蛍光体賦活剤として,TbDyFe合金は超磁気伸縮性材料でプリンターヘッドに,TbFeCo合金は磁気光学記録材料として用いられる.現在,もっとも重要な用途はネオジム磁石([別用語参照]希土類磁石)の保磁力を高め高温特性を改善するための添加剤で,ネオジム磁石需要の急増に伴って価格が急騰している.[CAS 7440-27-9]

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改訂新版 世界大百科事典 「テルビウム」の意味・わかりやすい解説

テルビウム
terbium

周期表第ⅢA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1843年スウェーデンのモサンデルC.G.Mosanderが,それまでイットリウム酸化物とされていたイットリアから三つの元素を分離した。そしてイットリウムの名称のもととなった産地イッテルビーYtterbyから,それを三つに分け,イットリウムyttrium,テルビウムterbium,エルビウムerbiumと命名した。ランタノイド元素のうち最も希産の元素の一つ。主要鉱石はガドリン石とセル石。

銀白色金属。化合物は3価が普通であるが,ほかに4価もある。3価の化合物は固体および水溶液で,多くは無色。常温では不対電子のため常磁性を示すが,温度を下げていくと,229K(ネルー点)~223K(キュリー点)で反強磁性,223K以下で強磁性となる。空気中で熱すると4価化合物となる。フッ素と反応して得られる4価化合物TbF4は無色,普通にみられる酸化物Tb4O7はTb2O3とTbO2の混合酸化物で,暗褐色を呈する。

他の希土類元素とともに鉱物中からとり出し,イオン交換法によってテルビウム化合物を分離し,塩化物とする。これを溶融塩電解するか,液体金属リチウムで還元する。精製するには1900~2100℃で蒸留する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「テルビウム」の意味・わかりやすい解説

テルビウム
てるびうむ
terbium

周期表13族に属し、ランタノイド元素で、希土類元素の一つ。1843年スウェーデンのモサンデルによって発見された。それまでイットリウムの酸化物といわれていたイットリアが3種の元素の酸化物からなることが明らかにされ、希土類元素鉱物が最初にみつかったスウェーデンの町イッテルビーYtterbyにちなんで、イットリウム、エルビウムと並んで命名された。希土類元素のうち、その量が少ないものの一つ。銀灰色の金属。空気中室温で表面が酸化され、熱時酸化テルビウム(Ⅲ)となる。熱水、酸に水素を発して溶ける。普通、酸化数Ⅲの化合物をつくる。

[守永健一・中原勝儼]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テルビウム」の意味・わかりやすい解説

テルビウム
terbium

元素記号 Tb ,原子番号 65,原子量 158.92534。周期表3族,希土類元素でランタノイド元素の1つ。通常モナズ石,ガドリン石などの希土類鉱物中に他の希土類元素に随伴して少量産出する。地殻における平均存在量 0.9ppm,海水中の存在量は確定されていない。 1843年スウェーデンの化学者 C.モサンデルが発見した。単体は銀灰色の金属で,融点約 1356℃,比重 8.277。空気中で容易に酸化される。酸化物 Tb2O3 は白色粉末。

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百科事典マイペディア 「テルビウム」の意味・わかりやすい解説

テルビウム

元素記号はTb。原子番号65,原子量158.92535。密度8.229,融点1356℃,沸点3123℃。希土類元素の一つ。1843年C.G.モサンデルが発見。

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