テルエル(英語表記)Teruel

デジタル大辞泉 「テルエル」の意味・読み・例文・類語

テルエル(Teruel)

スペイン中東部、アラゴン州の都市。イベリカ山脈東部、グアダラビアル川(トゥリア川上流部)沿いに位置する。サンタマリア大聖堂サンペドロ教会サンマルティン教会、エルサルバドル教会がイスラム文化を取り入れた中世スペイン建築の傑作として知られ、1986年に世界遺産(文化遺産)に登録。またサラゴサをはじめアラゴン地方にある他のムデハル様式の建築物も含め、2001年に「アラゴン州のムデハル様式の建造物」の名称で拡張登録された。

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改訂新版 世界大百科事典 「テルエル」の意味・わかりやすい解説

テルエル
Teruel

スペイン北東部,アラゴン地方の同名県の県都。人口2万8272(1989)。トゥリア川左岸にある交通の要所で,ケルト・イベリア族が建設したといわれる。当時はトゥルバの名で呼ばれていた。8世紀にイスラム教徒に占領されたが,1171年アラゴン王国支配下に入った。その後も多数のイスラム教徒が居住しつづけたため,ムデーハル様式の建築物が多い。ティルソ・デ・モリーナモンタルボボッカッチョなどの作品で知られる《テルエルの恋人》の墓がサン・ペドロ教会にある。スペイン独立戦争(1808-13)では,半島北東部の反抗拠点となり,さらにスペイン内戦(1936-39)では,1937年末から翌年春にかけ,一進一退攻防が繰り広げられた。結局フランコの率いる国民戦線軍がこの町を掌中にし,地中海岸に達して共和国軍を二分し,内戦勝敗を左右する結果となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「テルエル」の意味・わかりやすい解説

テルエル
てるえる
Teruel

スペイン中東部、アラゴン地方テルエル県の県都。人口3万1158(2001)。イベリカ山脈の東部、グアダラビアル川(トゥリア川上流の名称)の流れる盆地の標高915メートルに位置する。イベリア人の町トゥルバTurbaを起源とする古い町であるが、ローマ人により破壊され、8世紀にイスラム教徒が占領し再建された。1171年アラゴン王国の支配下に入るがその後も多くのイスラム教徒が居住し、イスラムの建築(ムデーハル様式)がみられる。中世にはユダヤ人も多く住んでいたが追放された(1486)。スペイン内戦中の1937年12月~38年2月に戦場となり歴史的建築物が破壊されたが、大聖堂やサン・マルタン寺院が残る。

[田辺 裕・滝沢由美子]

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百科事典マイペディア 「テルエル」の意味・わかりやすい解説

テルエル

スペイン北東部,アラゴン地方の都市。12世紀にキリスト教徒のアラゴン王国がこの地を支配するようになったが,15世紀まではイスラム教徒およびユダヤ教徒とも融和を保っていた。この時期に造られた,キリスト教とイスラム教の2文化が融合したムデーハル様式の建物や彫刻が多く残る。代表的なのは13世紀に建てられた,大聖堂,聖サルバドール,聖マルタン,聖ペドロの各教会の塔で,煉瓦とタイルを組み合わせた寄せ木模様の装飾が見事。大聖堂の格天井(ごうてんじょう)にはムデーハル様式の絵画も残る。これらのムデーハル様式の建築は1986年,世界文化遺産に登録。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テルエル」の意味・わかりやすい解説

テルエル
Teruel

スペイン北東部のアラゴン自治州南部,テルエル県の県都。バレンシアの北西約 110kmに位置し,グアダルビアル川とトゥリア川の合流点に臨む。城壁に囲まれた狭い街路の旧市街と,外側の近代的な郊外とからなる。 1936~39年のスペイン内乱時,激烈な戦場となった。大理石,コムギ,ワイン,チーズ,木材,麻,絹,羊毛などの集散地。ムデハール様式の聖堂群は 1986年世界遺産の文化遺産に登録。人口2万 8410 (1991推計) 。

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世界大百科事典(旧版)内のテルエルの言及

【スペイン内乱】より

…一方,共和国政府軍は国民戦線の背後をついて勢力を分散させる目的で,マドリード周辺(1937年7月のブルネテの戦)とアラゴン戦線(10月21日のベルチテの戦)で反撃に出たが,すべてむだに帰した。
[南北に分断された共和国]
 37年12月に共和国政府軍が奪回したアラゴン県テルエル市の攻防では,吹雪の中を両陣営とも精鋭部隊を繰り出し,動員兵数は双方合わせて10万人以上にも及んだ。また,砲火器,タンク,飛行機など兵器の面でも,まさに総力を結集した戦いとなった。…

※「テルエル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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