テトリル(読み)てとりる(英語表記)tetryl

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テトリル」の意味・わかりやすい解説

テトリル
てとりる
tetryl

正しくはN-メチル-N,2,4,6-テトラニトロアニリンという。略称CEcomposition exploding)。純粋なものは白色固体であるが、光などにより黄色に変色しやすい。N,N-ジメチルアニリンの濃硫酸溶液を硝酸、硫酸の混酸で合成する。水には溶けず、エタノールエーテルにも溶けにくいが、アセトンには溶ける。融解するとき分解する。TNTトリニトロトルエン)より爆発力が大きく、衝撃に敏感である。伝導薬、雷管添装薬として用いられる。硫化ナトリウムを作用させると水溶性の非爆発性物質となる。

[谷利陸平]

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改訂新版 世界大百科事典 「テトリル」の意味・わかりやすい解説

テトリル
tetryl



2,4,6-トリニトロフェニルメチルニトロアミンの慣用名。ほかに2,4,6-トリニトロ-N-メチルアニリン,ピクリルメチルアミンテトリライトテトライトテトラリタなどの呼名もある。爆ごう(轟)衝撃に対する起爆性がよいので,雷管の添装薬や他の爆薬を確実に起爆するための伝爆薬として用いられる。製造直後は無色結晶であるが,光に当たると黄色となる。融点129.4℃,比重1.71での爆速は7850m/sで,TNT(トリニトロトルエン)より強力である。またTNTに比べ,摩擦・衝撃に対して敏感であるが,熱安定性は劣る。ジメチルアニリンを濃硫酸でスルホン化し,次いで濃硝酸を加えてニトロ化して得られる。外国では2成分炸薬として用いられるためCE(composition explodingの略)とも呼ばれる。
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化学辞典 第2版 「テトリル」の解説

テトリル
テトリル
tetryl

N-methyl-N,2,4,6-tetranitroaniline.C7H5N5O8(287.15).ニトラミンともいう.モノあるいはジメチルアニリンを濃硫酸に溶かし,ついで硝酸でニトロ化分解してつくられる.淡黄色の柱状晶.融点129.5 ℃.1.57.180~190 ℃ で爆発する.λmax 225,300 nm(log ε 4.5,3.4).水,エーテル,クロロホルムに難溶,アセトン,ベンゼン,氷酢酸に可溶.強力な爆薬で感度も高い.伝爆薬または雷管の添装薬として用いられる.皮膚や粘膜を刺激する.[CAS 479-45-8]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「テトリル」の意味・わかりやすい解説

テトリル

2,4,6−トリニトロフェニルメチルニトロアミンの慣用名。ジメチルアニリンのニトロ化,またはジニトロクロルベンゼンとメチルアミンから作ったメモルジニトロアニリンのニトロ化によって得られる淡黄色の結晶。やや鋭敏で爆発力の強い爆薬。雷管では起爆できない鈍感な爆薬を爆発させるための伝爆薬として,または雷管の添装薬として用いられている。(図)
→関連項目雷管

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世界大百科事典(旧版)内のテトリルの言及

【火薬】より

…ピクリン酸,トリニトロトルエン(TNT),ヘキサニトロスチルベン(HNS),ジアミノトリニトロベンゼン(DATB),トリアミノトリニトロベンゼン(TATB)などは芳香族ニトロ化合物として分類される爆薬で,おもな用途は軍用である。ニトロアミノ結合N-NO2をもつニトラミン系爆薬としてはシクロトリメチレントリニトラミン(RDX),シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX),ニトログアニジンテトリルなどがある。いずれも軍用に用いられたが,現在ではRDXおよびHMXは砲弾の中につめる炸薬として,ニトログアニジンは発射薬の成分として,テトリルは雷管の添装薬として用いられている。…

※「テトリル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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