改訂新版 世界大百科事典 の解説
テトラヒドロホウ(硼)酸塩 (テトラヒドロほうさんえん)
tetrahydroborate
MⅠ[BH4],MⅡ[BH4]2,MⅢ[BH4]3,MⅣ[BH4]4で表される化合物の総称。式中のMⅠ,MⅡ,MⅢ,MⅣはそれぞれ1価,2価,3価,4価の陽イオンを示す。1940年シュレージンガーSchlesingerにより合成され,以後合成,反応,構造について多くの研究がなされているが,現在でも未解決の事項が多い。MIがアルカリ金属の場合はイオン結晶で,リチウム塩は斜方晶系,その他はすべて塩化ナトリウム型の面心立方格子である。BH4⁻は正四面体構造をとる。金属水素化物とジボランB2H6との反応で生成する。典型元素化合物に対しては還元,水素化物の生成などの反応をし,遷移元素化合物に対しては還元その他の多種の反応をする。また自身はジボランに変化することもある。MⅡがCa,Sr,Baの場合もイオン結晶と推定されるが,Be[BH4]2,Mg[BH4]2は,実はこのような化学式で表される構造ではなく,より共有結合性の化合物と思われる。Al[BH4]3は沸点44.5℃のきわめて不安定(空気中で爆発する)な化合物であるが,気相では,下式のようにアルミニウムについて6配位錯体となっている。
MⅣではZr,Hf,Th,Uなどの化合物が知られている。Zr[BH4]4の場合はZrのまわりに各BH4の3個の水素原子が配位し,Zrが12配位の錯体となっている。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報