テトラヒドロホウ(硼)酸塩(読み)テトラヒドロほうさんえん(英語表記)tetrahydroborate

改訂新版 世界大百科事典 の解説

テトラヒドロホウ(硼)酸塩 (テトラヒドロほうさんえん)
tetrahydroborate

M[BH4],M[BH42,M[BH43,M[BH44で表される化合物総称。式中のM,M,M,Mはそれぞれ1価,2価,3価,4価の陽イオンを示す。1940年シュレージンガーSchlesingerにより合成され,以後合成,反応,構造について多くの研究がなされているが,現在でも未解決の事項が多い。MIアルカリ金属の場合はイオン結晶で,リチウム塩は斜方晶系,その他はすべて塩化ナトリウム型の面心立方格子である。BH4⁻は正四面体構造をとる。金属水素化物とジボランB2H6との反応で生成する。典型元素化合物に対しては還元,水素化物の生成などの反応をし,遷移元素化合物に対しては還元その他の多種の反応をする。また自身はジボランに変化することもある。MがCa,Sr,Baの場合もイオン結晶と推定されるが,Be[BH42,Mg[BH42は,実はこのような化学式で表される構造ではなく,より共有結合性の化合物と思われる。Al[BH43は沸点44.5℃のきわめて不安定(空気中で爆発する)な化合物であるが,気相では,下式のようにアルミニウムについて6配位錯体となっている。

MではZr,Hf,Th,Uなどの化合物が知られている。Zr[BH44の場合はZrのまわりに各BH4の3個の水素原子が配位し,Zrが12配位の錯体となっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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