ティセリウス(読み)てぃせりうす(英語表記)Arne Wilhelm Kaurin Tiselius

精選版 日本国語大辞典 「ティセリウス」の意味・読み・例文・類語

ティセリウス

(Arne Wilhelm Kaurin Tiselius アーナ=ウィルヘルム=コーリン━) スウェーデンの物理化学者。電気泳動測定装置考案、血清蛋白質の研究で知られる。一九四八年ノーベル化学賞受賞。(一九〇二‐七一

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デジタル大辞泉 「ティセリウス」の意味・読み・例文・類語

ティセリウス(Arne Wilhelm Kaurin Tiselius)

[1902~1971]スウェーデンの化学者。シュリーレン法による電気泳動測定装置を考案し、血清たんぱく質の成分を明らかにした。また、ガンマグロブリン抗体であることを発見した。1948年ノーベル化学賞受賞。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティセリウス」の意味・わかりやすい解説

ティセリウス
てぃせりうす
Arne Wilhelm Kaurin Tiselius
(1902―1971)

スウェーデンの生物物理化学者。8月10日、ストックホルムの学者の家系に生まれる。イョーテボリの中学時代にティセリウスの心はすでに科学に傾き、当時一流の物理化学者スベドベリーもとで学ぼうと1921年ウプサラ大学に入学した。そして1925年、念願のスベドベリーの研究室に入り、当時超遠心機によるタンパクの沈降速度の研究に全精力を傾けていた師の指導と理解のもとでタンパクの電気泳動の研究に専心、これにより1930年学位を得た。1934年から1935年にかけアメリカに滞在、スタンリーノースロップランドシュタイナーら偉大な生物化学者の影響を受けてウプサラに帰りタンパクを分離する精密な電気泳動装置の製作に専心、ついに1937年、有名な「ティセリウスの装置」を完成し、血清タンパクを4種に分離することに成功した。1940年代からは、ゼオライト粘土の一種)、紙、ゲルなどのなかでの各種タンパク、高分子の吸着力の差を利用してこれらを分離する方法、いわゆるクロマトグラフィーの改良に従事、生体物質の分離法に画期的な進歩をもたらした。これらの業績に対して1948年ノーベル化学賞が授与された。健康に恵まれた彼も晩年心臓を弱らせた。医師忠告にもかかわらずある集会に出席、発作に襲われて倒れ、翌朝死去した。1971年10月29日のことであった。

[中川鶴太郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「ティセリウス」の意味・わかりやすい解説

ティセリウス
Arne Wilhelm Kaurin Tiselius
生没年:1902-71

スウェーデンの物理化学・生化学者。ウプサラ大学卒業後,同大学のT.スベドベリのもとで,コロイド,とくにタンパク質溶液の電気泳動(溶液中の巨大帯電粒子が電界やpHの影響で移動する現象)の研究を続けた。1938年同大学に彼のために設けられた生化学教授の地位につき,48年同大生化学研究所長,1946-50年スウェーデン科学研究会議長,60年ノーベル財団会長。在任中にノーベル・シンポジウムの創設に尽力。生化学に物理化学的方法を導入することに関心が強く,1937年巧妙な移動界面法を用いる新電気泳動装置を製作した(ティセリウスの装置)。血清タンパク質は,スベドベリの考案した超遠心分離機によりアルブミンとグロブリンからできていることがだいたいわかっていたが,彼は自作の装置を用いて,血清タンパク質を分離し,アルブミンとα-,β-,γ-グロブリンの4種を得た。そして抗体がγ-グロブリンであることを見いだした。以後この装置は,混合物の分析や分離・精製に広く応用されるようになり,臨床医学にも使われるようになった。彼はまたアミノ酸やタンパク質分解物溶液の吸着法による分析法などを研究し,生化学における重要な発見,諸装置の開発などの功により48年ノーベル化学賞を受けた。彼の多彩な功績のため,アミノ酸・タンパク質の化学は大きく進展した。
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化学辞典 第2版 「ティセリウス」の解説

ティセリウス
ティセリウス
Tiselius, Arne Wilhelm Kaurin

スウェーデンの生化学者.ウプサラ大学のT. Svedberg(スベドベリ)のもとでコロイド化学を学び,1925年Svedbergの助手となる.タンパク質溶液の電気泳動に関する研究で,1930年学位を取得し,同年ウプサラ大学化学助教授となる.1934年ロックフェラー財団奨学金を受けてプリンストン大学のH.S. Taylorのもとへ留学し,多くの生化学者,物理化学者と交流して帰国.1938年ウプサラ大学に新設された生化学教室の教授となる.移動界面法による電気泳動装置を考案(1937年)し,血清タンパク質がアルブミンα-β-およびγ-グロブリンに分離されることを発見した.この装置は混合物の分析や分離精製に広く利用された.また,γ-グロブリンと抗体産生の関係や,アミノ酸・タンパク質の吸着分析などの研究もある.1948年ノーベル化学賞を受賞.国際純正および応用化学連合会長や,ノーベル財団理事長も務めた.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ティセリウス」の意味・わかりやすい解説

ティセリウス
Tiselius, Arne (Wilhelm Kaurin)

[生]1902.8.10. ストックホルム
[没]1971.10.29. ウプサラ
スウェーデンの生化学者。ウプサラ大学卒業後,同大学 T.スベドベリの助手として研究を続け,1930年学位取得。プリンストン大学高級研究所で研究 (1934~35) ,その後ウプサラ大学教授 (38~68) 。スウェーデン科学研究会議議長 (46~50) 。ノーベル財団副会長 (47) ,同会長 (60) 。蛋白質溶液の電気泳動の研究およびティセリウスの電気泳動装置の発明 (37) ,血清蛋白の分離,アミノ酸および蛋白分解物溶液の吸着分析など,生化学の発展に貢献。 48年ノーベル化学賞を受賞した。

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百科事典マイペディア 「ティセリウス」の意味・わかりやすい解説

ティセリウス

スウェーデンの化学者。ウプサラ大学卒業後,同大学のスベドベリのもとでコロイド化学,特にタンパク質の電気泳動について研究。1937年〈ティセリウスの装置〉を考案し,これにより血清タンパク質がアルブミンおよびα‐,β‐,γ‐グロブリンよりなること,抗体がγ‐グロブリンであることを発見した。アミノ酸,ペプチド等の吸着法による分析についての研究も有名。1938年ウプサラ大学教授。1948年ノーベル化学賞。

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