ツメクサ(読み)つめくさ

改訂新版 世界大百科事典 「ツメクサ」の意味・わかりやすい解説

ツメクサ (爪草)
Sagina japonica(Sw.)Ohwi

庭や道端,畑にごく普通の,目だたない濃緑色のナデシコ科雑草和名は細くて曲がった葉を鳥のつめに見立ててつけられた。ツメクサ属Sagina英名pearlwortである。茎は基部でよく分枝して地表をはい,先は斜上して高さ5~15cm。葉は線形で長さ1~1.5cm,対生する。4~9月,葉腋ようえき)に長い柄をもつ小さな花を一つずつつける。花は径約5mm,花弁は5枚で切れ込みはなく,白色。花柱は5本,おしべは5~10本。蒴果(さくか)は先が5裂し,萼よりも少し突き出る。種子は小さく,円柱形の小突起でおおわれる。日本全国,朝鮮半島から中国にかけて分布する。中国では水ぶくれの薬として用いられることがある。海岸には,全体にやや大きく,種子に円柱状の小突起がないハマツメクサS.maxima A.Grayが多い。ナデシコ科には,いくつかの属にツメクサの名のついた植物がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツメクサ」の意味・わかりやすい解説

ツメクサ
つめくさ / 爪草
[学] Sagina japonica (Sw.) Ohwi

ナデシコ科(APG分類:ナデシコ科)の一年草または多年草。茎は斜め上に伸び、高さ5~15センチメートル。葉は線形、先はとがる。春から夏、葉腋(ようえき)に小さな白色花を単生する。花弁は多くは5枚で全縁、花柄萼片(がくへん)に腺毛(せんもう)がある。人家の庭や道端にごく普通に生え、日本全土、および東アジアの温帯に分布する。名は、葉が鳥のつめに似るのでいう。ツメクサ属には二十数種あり、日本には5種生育するが、いずれも小形でよく似ている。名が似ているがシロツメクサアカツメクサマメ科の植物で、本種とは関係ない。

三木栄二 2021年1月21日]


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百科事典マイペディア 「ツメクサ」の意味・わかりやすい解説

ツメクサ

タカノツメとも。ナデシコ科の一〜二年草。日本全土,東アジアに分布。平地の道端など人家近くにふつうにはえる。茎は束生し,高さ15cm内外,枝分れして線形の葉を対生。3〜7月に葉腋から長い花柄をのばし,白色で径4mmほどの5弁花を開く。果実は広卵形で,熟すと5裂。種子は小型で,小突起が密生。近縁のハマツメクサは海岸の岩地や日当りのよい平地にはえ,全体やや大型で種子の突起は目だたない。なお,マメ科のシロツメクサやアカツメクサ(クローバー)をさすこともある。

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世界大百科事典(旧版)内のツメクサの言及

【クローバー】より

…マメ科,シャジクソウ属Trifoliumの多年草または一年草の総称。江戸時代,オランダから医療器具などを輸入した際,荷詰め用として日本に渡来したところからツメクサの名がある。葉は3枚の小葉からなる複葉で,葉柄は長く,茎に互生する。…

【シロクローバー】より

…牧草や芝草として利用されるマメ科の多年草。シロツメクサ(白詰草)ともいう。また単にクローバーと呼ぶ場合は,この種をさすことが多い。…

※「ツメクサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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