ツバメチドリ(英語表記)Glareola maldivarum; Oriental pratincole

改訂新版 世界大百科事典 「ツバメチドリ」の意味・わかりやすい解説

ツバメチドリ (燕千鳥)

チドリ目ツバメチドリ科Glareolidae総称,またはそのうちの1種を指す。この科の鳥はツバメチドリ類(英名pratincole)とスナバシリ類(英名courser)とに分けられる。

 ツバメチドリ類は小型~中型で,くちばしは短くて少し下に曲がり,基部の幅は広くて口は大きく開き,脚は長くない。翼は長くて先がとがり,尾は二またに分かれている。ツバメを大きくしたような形で空中採餌に適している。色は上面が灰褐色で下面は淡い。ヨーロッパ南部,アフリカ,アジア南部に分布し,7種があり,日本には1種が分布する。乾燥した荒地や砂地川原などにすみ,地上に浅いくぼみをつくって1腹2~3卵を産む。抱卵日数は20日くらいで,雛は綿羽に包まれ早成性である。地上で昆虫などをとることもあるが,空中を飛び回ってトンボ,アブなどの昆虫をくちばしでくわえてとることが多く,飛翔(ひしよう)は速くて巧みである。アフリカではバッタをよく食べるので知られている。スナバシリ類はアフリカを主産地とし,ヨーロッパ南部にも分布している。全長は20cmくらいで,くちばしは比較的長くて下に曲がり,脚は体に比べて長く,前指3本だけで後指はない。翼は短い。黄褐色または褐色で白い眉斑と黒い過眼線をもつものが多い。乾燥した砂地にすみ,すばやく走り,立ち止まってつま先立ちで胸を反らせ,くびを伸ばして周囲を見る動作には特徴がある。地上に巣をつくり,1腹2~3卵を産む。ナイルチドリもこの仲間である。

 ツバメチドリGlareola maldivarum(英名Indian pratincole)はトランスバイカリア,モンゴル,中国,東南アジア,インド,台湾などで繁殖し,北の地域のものは冬,南へ移動する。日本にはおもに秋に旅鳥として全国的に渡来し,水田干拓地,川原などにすむ。少数は繁殖し,静岡,愛知,鳥取,福岡,宮崎で記録がある。全長約27cm。夏羽では体の上面は褐色で上尾筒は白く,翼の先と尾は黒い。のどはクリーム色で周囲を黒線が囲んでいる。胸は淡黄褐色で腹は白い。くちばしの基部は赤い。冬羽ではのどの黒線は不明りょうになる。飛びながらクリリクリリと鳴く。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツバメチドリ」の意味・わかりやすい解説

ツバメチドリ
Glareola maldivarum; Oriental pratincole

チドリ目ツバメチドリ科。全長 23~27cm。背面と胸は灰褐色,腹は白色である。夏羽(→羽衣)ではクリーム色の喉が眼下からぐるりと黒い線模様で縁どられ,特徴的な顔つきをしている。冬羽では全体にぼやけた色彩になる。は長く,裏面の後方(風切)が黒く,前方(下雨覆)が栗色。尾は燕尾形で,飛ぶ姿がツバメに似ていることから和名がつけられた。インドからインドシナ半島モンゴル東部から中国東部,シベリア東南部に繁殖分布し,中国南部,インドシナ半島,東南アジアオーストラリアで越冬する。日本では,毎年本州中部を中心に旅鳥(→渡り鳥)として渡来し,広い埋立地や砂原,河原などで見られ,繁殖も確認されている。以前はまれにしか観察されなかったが,近年渡来数が増加している。昆虫食で,おもに空を飛び回りながら捕食する。「くりり,くりり」と鳴く。なお,ツバメチドリ科 Glareolidaeは 4属 17種からなる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツバメチドリ」の意味・わかりやすい解説

ツバメチドリ
つばめちどり / 燕千鳥
pratincole

広義には鳥綱チドリ目ツバメチドリ科ツバメチドリ属に含まれる鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この属Glareolaには8種が知られていて、ヨーロッパ、アジアの南部、アフリカ、オーストラリアなどに分布する。草が少量生えている荒れ地、干上がった沼沢地など広い場所に生息し、繁殖する。密ではないが、コロニーをつくる。翼は細長くて飛行速度も速く、空中でバッタ類やトンボ類などの昆虫をとらえ餌(えさ)にしている。

 種のツバメチドリG. maldivarumは、全長26.5センチメートル。上面と胸はオリーブ褐色で、下面は淡色。尾は燕尾(えんび)で長めである。のどはクリーム色で、それを囲む黒線をもつ。アジアの温帯、熱帯に広く分布し、日本でも全国から記録はあるが希種。しかし近年、西南日本では繁殖するものがある。

[柳澤紀夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ツバメチドリ」の意味・わかりやすい解説

ツバメチドリ

ツバメチドリ科の鳥。翼長18cm。ツバメチドリ科の鳥はツバメのような翼と尾をもち,世界に8種いる。ナイルチドリもこの一種。ユーラシア南東部に分布し,東南アジアで越冬する。日本へは数少ない旅鳥として渡来するが,少数が繁殖する。農耕地や乾燥した荒れ地に生息し,昆虫を食べる。絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目チドリ(千鳥)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android