ツバサゴカイ(読み)つばさごかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツバサゴカイ」の意味・わかりやすい解説

ツバサゴカイ
つばさごかい / 翼沙蚕

環形動物門多毛綱定在目ツバサゴカイ科の総称、またはそのなかの1種。種のツバサゴカイChaetopterus variopedatusは、体長20センチメートル内外で、前、中、後の3体部からなる。前体部は9環節からなり、頭部に1対の細長い副感触手がある。5節からなる中体部の第1節には大きな1対の翼状背足枝があって、この名がつけられている。砂や貝殻片を付着した膜質の管の中にすみ、U字形に深さ10~50センチメートルも潜って管の両端砂上に出す。ツバサゴカイが機械的あるいは化学的な刺激によって発光することは古くから知られており、副感触手や中体部の翼状の背足枝と後体部のいぼ足の基部などの腺(せん)から発光物質が分泌され発光する。本州中部地方以南に分布し、干潟から水深10メートルくらいまでの砂泥中にすむ。

 ツバサゴカイ科Chaetopteridaeの種類は、日本に5種類が知られている。スナタバムシMesochaetopterus minutusは、直径2ミリメートルほどの砂をつけた管をつくり、それらが多数集まって大きな塊になる。アシビキツバサゴカイTelepsavus costarumは、多数の環線をもった角質様の棲管(せいかん)をつくる。

[今島 実]


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改訂新版 世界大百科事典 「ツバサゴカイ」の意味・わかりやすい解説

ツバサゴカイ
Chaetopterus variopedatus

多毛綱ツバサゴカイ科の環形動物。中体部に1対の大きな翼状背足枝をもっているところからこの名がある。本州中部以南から世界の温帯域に広く分布し,砂泥中に深さ30~50cmのU字形の穴をつくってその中にすむ。管の両端は砂上にでている。体長20cm内外で前,中,後の3体部からなる。前体部には9環節あり,頭部に1対の細長い副感触手をもっている。中体部は5節からなり,その最初の節に翼状背足枝があって,上方に向いている。後体部は13~60体節からなる。ツバサゴカイが機械的または化学的な刺激によって発光することは昔から有名である。副感触手,翼状背足枝,円形吸盤体,扇状体と後体部のいぼ足の基部などがとくに強く発光する。発光には表皮にちらばった発光細胞によるものと,発光細胞が集まって腺となったものにより,ルシフェリン,ルシフェラーゼのほかにごく微量の鉄が必要である。ツバサゴカイ科にはスナタバムシ,アシビキツバサゴカイなど日本に5種類知られている。
ゴカイ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツバサゴカイ」の意味・わかりやすい解説

ツバサゴカイ
Chaetopterus variopedatus; parchment worm

環形動物門多毛綱定在目ツバサゴカイ科。体長5~25cm。体は柔軟で,3部分に分れる。前体部は扁平で9節から成り,各体節には剛毛の束がある。中体部は5節で,その第1節には翼状突起を,第2節は長く,背中線上に円形吸盤体を,他の3節には円板状の扇状体をそれぞれもつ。後体部は最も長く,ゴカイに似た体節が 15~60節並んでいる。潮間帯,あるいは浅海の砂泥底に長さ 80cmほどのU字形の膜質の棲管をつくり,その中にすむ。棲管の両端は砂泥底上に突き出ている。刺激を与えると全体が発光し,特に中体部が強く発光することが知られている。本州中部以南の太平洋インド洋ペルシア湾地中海大西洋に分布する。

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