ツノガエル(読み)つのがえる(英語表記)horned frog

改訂新版 世界大百科事典 「ツノガエル」の意味・わかりやすい解説

ツノガエル (角蛙)
horned frog

眼の上に角状突起をもつユビナガガエル科ツノガエル属Ceratophrysに属するカエル総称。10種ほどが南アメリカのコロンビアブラジルウルグアイなどに分布している。体長10cmほどで,小さい種はギュンターツノガエルC.appendiculataの3cm余り,大きな種はアマゾンツノガエルC.cornutaの20cm余り。体色は黄色,緑色,赤色の目だつ色彩に黒い模様があるが,生息地ではこれが保護色となっている。昼間はほとんど土か落葉の中に潜り,眼と吻(ふん)部だけ出している。眼の上には皮膚の角状突起があるが,ほとんど突起にならない種類もある。この突起は土から顔を出すとき,眼が土をかぶらない働きをする。口が大きくてあごの力が強く,昆虫,クモ,他のカエル,小さなネズミ類まで,通りかかる獲物を土の中からとび出してとらえる。カエルには珍しく攻撃的で人の指にもかみつく。

 東南アジアにはスキアシガエル科で眼の上に突起をもつアジアツノガエル属Megophrysが生息し,またソロモン諸島にはアカガエル科のソロモンツノガエルCeratobatrachus guentheriがおり,地域系統も異にする種が相似形態となる生物の並行進化の一例を示している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツノガエル」の意味・わかりやすい解説

ツノガエル
つのがえる / 角蛙
horned frog

両生綱無尾目レプトダクチルス科ツノガエル属に含まれるカエルの総称。この属Ceratophrysには南アメリカ産の6種が含まれ、大形の種は体長15センチメートル以上に達する。背面は赤、紫、緑、黄などの多様な斑紋(はんもん)があって美しい。代表種はブラジルツノガエルC. cornuta、ベルツノガエルC. ornata、コロンビアツノガエルC. calcarataなどである。ずんぐりした体形で、頭部と口が著しく大きい。上眼瞼(がんけん)が三角形の突起となって目の上に張り出す。林床で生活するが運動は鈍く、もっぱら土や落ち葉の間に潜んでネズミ、トカゲ、ヘビ、カエルなどを待ち伏せ、強い口で捕食する。攻撃性が強く、人の指にかみつくこともある。池の水底に卵を分散して産み、オタマジャクシは肉食性の傾向をもつ。

[倉本 満]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツノガエル」の意味・わかりやすい解説

ツノガエル
Ceratophrys calcarata

カエル目ユビナガガエル科。体長 10cm内外で,体は丸く太っている。まぶたの上側が伸び,角のような突起になっているのでその名がある。背面に茶と緑の模様があり,派手で美しい。森林にすみ,土や落葉の下などにもぐっていることが多い。昆虫類をはじめ他の小動物も捕食する。南アメリカ北部に分布する。

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