ツィンツェンドルフ(英語表記)Nikolaus Ludwig, Graf von Zinzendorf

改訂新版 世界大百科事典 「ツィンツェンドルフ」の意味・わかりやすい解説

ツィンツェンドルフ
Nikolaus Ludwig, Graf von Zinzendorf
生没年:1700-60

ヘルンフート兄弟団の設立者,指導者。ドレスデンに生まれ,敬虔派の祖母の意向でハレのペダゴギウムで学ぶ。この地の敬虔主義の諸事業に深く感銘し,その運動に参加した。政治家として立ったが,その間ボヘミアから信仰のため追放されたモラビア兄弟団を自領内のヘルンフートに保護し,その指導者ともなる。彼は世界的教化を使命となし外国伝道を推進した。みずからもヨーロッパ,イギリス,アメリカへ伝道旅行をなす。イギリスのメソディスト運動への影響は多大である。その信仰はキリスト受難と死を強調するもので,宗教における感情の位置を尊重する。ここに意志性に傾く倫理的なハレ派との対立も生じたのである。この感情重視の宗教観はシュライエルマハーを介して19世紀キリスト教に根本的作用を及ぼした。ヘルダー,キルケゴール,ビスマルクらも彼の影響を受けている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツィンツェンドルフ」の意味・わかりやすい解説

ツィンツェンドルフ
Zinzendorf, Nikolaus Ludwig, Graf von

[生]1700.5.26. ドレスデン
[没]1760.5.9. ヘルンフート
ヘルンフート兄弟団を設立したドイツの宗教指導者。ウィッテンベルク大学で法律,神学を学び,ドレスデンのザクセン宮廷に出仕した。その地で迫害を逃れたボヘミア兄弟団員を知り,これがヘルンフート兄弟団の始りとなった。しかし兄弟団に対する圧迫も強く,1736年にはザクセンから追放され,ウェッテラウに移り,ヘルンハーグで新たな兄弟団を設立したり,ボヘミアで迫害されたモラビア兄弟団を保護したりした。 37年にはこの兄弟団の組織を使徒継承の監督制度から分離しないようにするためにベルリンで監督としての聖別を受け,西インド諸島,ペンシルバニアへ伝道活動におもむいた。 47年にはザクセンからの追放が解除された。神学的には,宗教における感情的要素を強調して,「心の宗教」を説いた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツィンツェンドルフ」の意味・わかりやすい解説

ツィンツェンドルフ
つぃんつぇんどるふ
Nikolaus Ludwig von Zinzendorf und Pottendorf
(1700―1760)

ドイツの宗教家。ヘルンフート兄弟団の創始者。貴族名家に生まれる。敬虔(けいけん)主義の教育を受け、1722年オーバーラウジッツの自分の領地に宗教的迫害者のための居留地ヘルンフート(神の加護)を建設した。ルター派教会の枠内にとどまりながら兄弟盟約に基づくキリスト教の精神的覚醒(かくせい)運動を開始し、さまざまな圧迫に耐えてイギリスやアメリカにも運動を広めた。メソジスト教派の成立には、彼の影響が大きい。詩才もあり、多数の賛美歌を残した。

[坂井榮八郎 2018年1月19日]

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世界大百科事典(旧版)内のツィンツェンドルフの言及

【キリスト教】より

…ドイツのルター派教会は,1世紀にわたる激動ののちに,敬虔主義(ピエティスムス)によって近代化への道を歩み出した。シュペーナー,フランケ,ツィンツェンドルフに代表される3代の歩みは,啓蒙の進展と重なっている。敬虔主義は,超自然的理性でもって組織される正統主義の教義学を排し,聖書と説教を重んじ,内的敬虔の豊かな信徒の共同体をつくり,社会的実践にも積極的に取り組んだ。…

【敬虔主義】より

…その後フランケによりハレが中心地となる。ハレで学んだツィンツェンドルフはのちにヘルンフート兄弟団を設立し,ハレ派の意志強調に対抗して感情重視の立場を尊重した。ビュルテンベルクには独自の民衆的敬虔主義が展開し,古典的な敬虔主義的聖書解釈者ベンゲルJohann Albrecht Bengel(1687‐1752),特異な体系的思想家エティンガー等が輩出する。…

※「ツィンツェンドルフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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