チリモ(読み)ちりも

改訂新版 世界大百科事典 「チリモ」の意味・わかりやすい解説

チリモ (塵藻)
desmid
Desmidium

細胞が鎖状に連結してできた糸状群体性の接合藻の1属で,体は分枝がなく,らせん状にねじれ,周囲は厚い寒天状物質でおおわれる。個々の細胞は,縦より横幅の広い三角柱または四角柱状で,中央に湾部と呼ぶ浅いくびれをもつ。無性生殖は湾部を通る二分裂による。有性生殖では,接近した2個の糸状体の各細胞からのびて連結した接合管に,細胞内容が移動して接合が行われる。チリモ属は広く淡水生育し,日本では5種が知られる。この属を基本属とするチリモ科Desmidiaceaeは,単細胞または群体性糸状体で,細胞壁は2層またはそれ以上からなり,細かい小孔をもち,外表に種々の模様をもつことで特徴づけられる。この科に所属するツヅミモCosmariumは最多種数を含む属で,日本でも200余種の生育が知られる。藻体は球状体を中央でくびって少し押しつぶした形状で,長さは,大型の種類では100μmに近く,小型の種類では10μm程度である。広く淡水に生育する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チリモ」の意味・わかりやすい解説

チリモ
ちりも / 散藻
[学] Desmids

緑藻植物、接合藻目のなかの単細胞藻の総称(チリモ亜目)。チリモ亜目はすべて淡水産で、ツヅミモ、ミカヅキモ、クンショウチリモ、コウガイチリモなど多数の属が含まれる。単細胞である体の外形は鼓形、三日月形などさまざまであるが、接合という独特の方法で有性生殖を行うのが特徴である。もっぱら細胞分裂によって無性的に殖えるが、このとき、古い半細胞に新しい半細胞が付け加わる方法をとるため、ツヅミモのように真ん中でくびれる仲間では2個の細胞からできているようにみえる。各地の湖沼湿原水田にみられるが、とくに高地の湿原に多産し、色も形も非常に美しいことから、夜空に散る星になぞらえ、「水に散る藻」の意でチリモとよばれる。

小林 弘]

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