チョマ(読み)ちょま(英語表記)ramie

翻訳|ramie

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョマ」の意味・わかりやすい解説

チョマ
ちょま / 苧麻
ramie
China grass
[学] Boehmeria nivea Gaud.

イラクサ科(APG分類:イラクサ科)の多年草。英名ラミー。東南アジア原産。茎から靭皮(じんぴ)繊維をとるために栽培される。植物学的には同種の野生のものが西日本に帰化しており、ナンバンカラムシの名がある。根株から多数の直立性の茎を出し、高さ1~2メートルとなる。葉は互生し、卵形で先はとがり、長さ約10センチメートル、縁(へり)には鋸歯(きょし)があり、葉柄は長い。夏、葉腋(ようえき)から花穂を出し、多数の小花を開く。株分け挿木で増殖し、収穫は夏場を中心に年に2、3回、熱帯では約6回刈り取れる。葉の裏面に白毛が密生するシロチョマと白毛のないミドリチョマとがある。シロチョマは古くから日本、中国などの温帯で栽培され、繊維は良質であるのに対し、ミドリチョマはマレーやインドなどの熱帯で栽培されるが、品質は劣る。茎からとった繊維は長く、しかもじょうぶで水にも強く、織物にするほか、ロープ、網、農作物を入れる袋などの材料とする。

 日本では古くから縮(ちぢみ)や上布(じょうふ)に利用される。粗繊維灰汁(あく)に浸(つ)けて水洗いし、雪上にさらして精製すると光沢が出て美しい。布を織ってさらすのが縮、さらした糸で織ったものが上布で、産地により越後(えちご)上布や小千谷(おぢや)縮などとよばれる。

星川清親 2019年12月13日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「チョマ」の意味・わかりやすい解説

チョマ (苧麻)
China grass
Boehmeria nivea Gaud.

ラミーramie,マオ麻(真)苧ともいい,茎から靱皮繊維をとる。その繊維で織った布を上布(じようふ)と呼び,越後上布,小千谷縮(ちぢみ),宮古上布などが有名で,産地によって特色がある。イラクサ科の多年草で,茎は直立し,高さ1~2m。葉は先のとがった卵形で,鋸歯があり,長さ10cmほど。葉柄は長く,茎に互生する。夏に葉腋(ようえき)から花穂を出し,多数の小花を咲かせる。雌花の穂は茎先付近に,雄花穂は下位につく。原産地は東南アジア地域とされ,中国では古くから栽培されていた。気温,湿度ともに高い気候を好み,日本中部以南の低山地や平地にも広く野生している。栽培種には,葉の裏面に白毛が密生する白チョマと,毛のない緑チョマとがある。白チョマ(カラムシ)は古くから日本,中国など温帯で栽培され,繊維は良質。それに対し緑チョマはおもに熱帯で栽培され,繊維の品質は劣る。株分けか挿木で増殖し,日本では3月ころに苗を植え付ける。その年から収穫できるが,収量が安定するのは3年目以降である。収穫は夏場を中心に年に2~3回,熱帯では6回ほど茎を刈り取る。茎からとった粗繊維は丈夫で水に強く,ロープや網,消火ホース,蚊帳(かや)などにする。またブラジルではコーヒー豆を入れる袋をつくる。この粗繊維からペクチン質を除き精製すると光沢の美しい強い繊維がとれる。このため灰汁(あく)につけ,水洗いしては雪上にさらす。布を織ってさらすのが,さらした糸で織ったものが上布である。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のチョマの言及

【アサ(麻)】より

…また,広義にはタイマに類似した靱皮繊維を採る植物,およびその繊維の総称でもある。アサと呼ばれる植物には,タイマ(アサ科)のほかに植物学的には直接的な類縁がないチョマ(苧麻,カラムシ),ボウマ(莔麻,イチビ),コウマ(黄麻,ジュート,ツナソ),アマ(亜麻),ケナフ(洋麻)などがある。タイマと同様これらの茎の表皮のすぐ下の部分(靱皮)から繊維が採れる。…

【麻織物】より

…天然の植物繊維である麻を使った織物。麻の種類や幹,茎,葉など採取する部分の相違によって種類,製法もきわめて多く,性能,用途も異なる。おもなものに亜麻(フラックス。織ったものをリネンと呼ぶ),苧麻(ちよま)(ラミー,カラムシともいう),大麻(ヘンプ),黄麻(ジュート,つなそともいう),マニラ麻,サイザル麻などがある。麻類はそれぞれ相違はあるが,多くは繊維細胞が集まって繊維束を形づくっており,繊維束の繊維素以外に表皮や,木質部,ゴム質,ペクチン質などを含有しているので,より細かく分繊して糸にし織物にするのが良く,ロープ,紐類などは繊維束をそのまま撚り合わせて使用する。…

※「チョマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android