チッチゼミ(英語表記)Cicadetta radiator

改訂新版 世界大百科事典 「チッチゼミ」の意味・わかりやすい解説

チッチゼミ
Cicadetta radiator

半翅目セミ科の昆虫日本本土に産するセミの中では最小の種。発音器の背弁がなく,チッチゼミ亜科Tibicininaeに属する。体長18~24mm,前翅の開張48~57mm。体は黒く,体表には銀灰色の鱗毛が生え,中胸背には1対の黄褐色の三角紋がある。翅は透明で,基部にある翅底膜は橙色。翅をたたんだとき,横から見ると後翅の一部が上方に飛び出す。体腹面は赤みを帯びた褐色である。北海道恵山本州四国,九州の英彦山などに分布する日本特産種。平地から山地にかけて見られ,おもにアカマツなどの枝や葉に止まり,チッチッチッ……と単調に鳴き,その声はホソクビツユムシ(キリギリス科)に似る。

 北海道にはよく似たエゾチッチゼミC.yezoensisが分布し,体が大きく(体長20~28mm)丸みがあり,頭頂部に黒毛を密生する点で区別される。枝先や葉上に止まり,シシシシ……という声で鳴く。また,飛びながら鳴くことがしばしばあり,飛翔(ひしよう)時も声をかえないことから発見するのが困難である。
セミ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チッチゼミ」の意味・わかりやすい解説

チッチゼミ
ちっちぜみ
[学] Cicadetta radiator

昆虫綱半翅目(はんしもく)同翅亜目セミ科に属する昆虫。雄の発音器の背弁を欠くことから、チッチゼミ亜科に分類される。小形のセミで、体長20ミリメートル内外。体は黒色で、銀灰色の鱗毛(りんもう)を密生し、中胸背中央には1対の三角形の黄褐色紋がある。はねは透明で、翅底膜(していまく)は赤橙(せきとう)色。はねを畳んだ際に、後翅の一部が三角形状に背面側に突出する。アカマツなどの針葉樹にすみ、8、9月に出現する。鳴き声は、チッチッ、……と単調で、ツユムシの一種の声に似る。日本特産種で、北海道南部から九州にかけて分布する。近縁種エゾチッチゼミC. yezoensisは北海道、樺太(からふと)(サハリン)、千島列島にすみ、体はやや丸みがあって大きく、体長25ミリメートル内外。鳴いたまま飛ぶ習性がある。

[林 正美]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チッチゼミ」の意味・わかりやすい解説

チッチゼミ
Cicadetta radiator

半翅目同翅亜目セミ科。体長 (翅端まで) 30mm内外。体は黒色で,頭部と前胸背に褐色の小斑紋があり,中胸背には2個の暗黄色斑がある。翅は透明で長く,たたむと後翅の一部が背面の翅の合せ目より三角形状に突出する。腹弁は小さい。夏から秋にかけて,「ちっちっちっ」と連続的に鳴き,マツやスギに止っていることが多い。山地性で,北海道 (恵山) ,本州,四国,九州に分布する。近縁のエゾチッチゼミ C. yezoensisはやや大型で,北海道に産する。 (→セミ )

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百科事典マイペディア 「チッチゼミ」の意味・わかりやすい解説

チッチゼミ

半翅(はんし)目セミ科の昆虫の1種。日本産セミ類中の最小種で体長20mm内外。黒色,背面中央に2個の小さい暗黄斑がある。北海道を除く日本の特産。低山地に多く,7月下旬〜10月に現れ,チッチッ…と鳴く。北海道には別種エゾチッチゼミがいる。

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